1 はじめに 機械工学は形あるもの、動くもの全てを扱います。その原理、仕組みから構造、設計に至るまで を学びます。英語に直すと「Mechanical Engineering」このように直すとイメージがまるきりか わってしまうでしょう。同様に流体力学も裾野が広いのです。 さて、本当の機械動作はさておき、動きの究極は動物、人間です。ロボットはあくまでもそれら の動きを模擬したものに過ぎません。私は人間の究極の動きであるスポーツをメインテーマとして 「スポーツ工学」を扱っています。スポーツ工学という分野 は実際に行っている研究者は世界的に見てもほんの一握り。スポーツを工学的・理論的に考えると まったく新しい技法が生まれたり新しい用具が編み出されたりするのです。 防衛大学校と聞くと防衛関係の研究をしていると思われがちですが、そうではありません。一般大 学+防衛学を学び研究するところと考えてください。私の研究のように一般の大学でも扱っていな いような研究をする者がこの防衛大学校にはいるのです。 さまざまなスポーツがあるのと同様にスポーツ工学にもいろいろな切り口が存在します。 私の専門は「流体力学、流体工学」。本来は水や空気の中で物はどう動くのか、どのように流れる のかを扱う分野です。例えば飛行機はなぜ飛ぶか?ジェットエンジンはどのような原理で動くかと かを学ぶ学問ですが、この分野をスポーツに持ち込んで研究しています。
スポーツと流体力学に接点はあるのでしょうか?意外にもたくさんあります。
2 研究紹介
自由形競技ではイアン・ソープ
が200、400、800mの世界記録ホルダーです。彼の泳ぎは他の
泳者と異なり、ゆっくり泳いでいるように見えて速いのです。ひとつの謎でした。
Fig.1にその概略を示します。その泳法とは手のひらは身体に対してS字状に描くという従来言わ
れてきた自由形泳法S字プル泳法と異なり、手のひらをまっすぐに動かすI字プル泳法、いわゆる
「スッポン泳法」の誕生です。
(2004年10月12日に、TBSの番組ブレインサミットU
で紹介されました)2002年の私の学会発表以来、スッポン泳法
は世界に広まりつつあります。(ちなみに4年に1度開催される第9回世界水泳医学バイオメカニズ
ムシンポジウムで私は日本人初の最優秀賞をいただきました)
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この泳法はシドニー五輪ではイアンソープだけでしたが、アテネ五輪では確実にその泳法は増えて います。そして北京五輪では主流になるかもしれません。さらにまだまだ理論的には記録が伸びる はずの水泳競技を理論的に追及しています。日本チームを必ず速くしてみせます。 さらに日本のお家芸で一見完成したように見えるシンクロナイズドスイミング(NHKにて解説しました)に関してもナショナルチームに取り入れてもらうべく,シンクロに最適な手のひら形状を見出しています。公表できない研究も行っています。
(2)フィールド競技 Fig.2に示すのは近年のマラソン競技で認められているペースメーカーと走者との間に生じる気流 の様子です。ペースメーカー配置が適切であれば、空気抵抗を減らして体力の温存に繋がります。 試算では4分30秒ほどの体力温存効果があることがわかりました。特に速力のある男子のペース メーカーを用いることで女子マラソンの世界記録はさらに伸びる可能性があります。 |

| Fig.2 集団走行時の空気の流れの様子(一例) |
| またその一環で、流体力学の研究と併せて重心移動の力学の研究も行っています。スポーツ工学を行 うにはひとつの専門にこだわっていては進みません。私の場合は流体力学に軸足を置きながら、身 体のコントロールということで制御工学がその補助となっています。 |
以上簡単ですが、進学へのご参考まで。
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(文責:システム工学群 機械工学科 講師 伊藤慎一郎) |