討論形式の授業を通じたアクティブ・ラーニングの推進
平成6年4月10日に行われた学群教育・研究発表会において、浦口薫2等海佐が「討論形式の授業を通じたアクティブ・ラーニングの推進」について発表しました。内容は国防論の授業に討論を取り入れ、アクティブ・ラーニングの推進を図るものでした。
アクティブ・ラーニングとは、学修者が能動的に学ぶことによって、認知力、倫理力、社会的能力、教養、経験などの汎用的能力の向上や育成を目指すものです。防大の教育訓練の目的には「伸展性のある資質」を育成するとの記述があります。同資質は解決方法が明確でない任務を遂行したり、問題を含んだ環境の中で状況を改善しつつ任務を達成する能力を含むと考えられます。アクティブ・ラーニングは「伸展性のある資質」の育成と適合性が高く、討論を通じて向上可能と考えられます。
浦口2佐は、国防論の第1回授業時、学生に、核兵器の威嚇・使用の妥当性と無制限潜水艦戦の妥当性の2つのテーマを提示しました。テーマは、国防について多面的に考える契機となり、議論に賛否の主張が未だに存在するものという観点で選定しています。学生の自発的な研究を促すため、国会図書館ツアーを計画して学生の情報アクセス能力や学習モチベーションの向上を図ったり、学生間での事前研究会を実施させチームでの問題解決能力の向上を図りました。
討論は、全学生を討論実施者とオーディエンスに区分し、討論実施者は論旨賛成側のAチームと反対側のBチームに区分して実施しました。討論の構成は、最初にA・Bチームが各チームの立場を主張、次いで相手主張に対し反論し、最後に相手反論に対する再反論を実施する形で実施し、オーディエンスとの質疑応答を経て、オーディエンスの挙手により勝利チームを決定しました。オーディエンスにはオーディエンス・シートを配り、各チームの発表を評価させました。オーディエンス・シートの記入を通じ説得力のある主張を理解させることができました。また、討論全般を通じて、1つの問題にも多面的な見方があり答えは決して1つではないことを学生に実感させることができました。
討論を通じたアクティブ・ラーニングの導入により、問題解決能力の向上、情報アクセス能力やチーム問題解決能力の向上、問題の多面性の体感等、学生が得たものは少なくなかったと思われます。浦口2佐は、「単に授業で討論を実施したのみに留まらず、討論というアクティブ・ラーニング形式の授業の導入やその実施に向けた準備を通じ、学生の『伸展性のある資質』向上に寄与できた」として発表を締めくくっていました。
浦口2等海佐の発表景況