気候・地殻変動の影響を受け、これまでにない大規模な自然災害が多発する傾向にあります。例えば、東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)や熊本地震のような巨大地震、連鎖地震の発生が継続しています。また、火山噴火活動が活発化しており、今後、富士山を代表とする活火山の大噴火を想定した防災計画が不可欠です。さらに、集中豪雨による大規模な斜面崩壊や土石流の発生、大規模竜巻の頻発など、安心・安全な社会を構築するために対策を講ずべき自然災害は増加しています。
一方で、国際政治の不安定化に伴う人為的な爆破テロあるいは化学プラント工場における大規模爆発も多発する傾向が認められます。このような爆発災害の頻度は小さいですが、一度発生すると大規模な爆発を伴うため広い範囲にわたって人命や建物へ損害を与え、さらに社会機能の停止など社会へ甚大な影響を及ぼします。
このような人為的あるいは自然現象に起因する大規模災害に対して損害を抑制するためには、事前に綿密な計画を立案し、訓練等を行う必要があります。一方で、防災・減災の主体である自治体の人的資源あるいは予算には制約があるため、地域の災害特性を十分に考慮した計画を独自で立案することは容易ではありません。さらに、発災直後においては自治体と自衛隊、消防および警察との組織連携が極めて重要であることが指摘されていますが、この点についても地域社会の特性を考慮して事前に検討すべき課題です。
本研究分野は、「防災・危機管理」というテーマについて、独自のアプローチを試みるものです。自然災害については、特に地震、火山噴火、土石流、竜巻など近年多発し、かつ大規模化する傾向にある災害ならびに爆発に起因する事故のハザード(災害規模の頻度)特性の解明を試みます。また、防災構造物の提案や補強法などいわゆる防災シェルターの開発やフラジリティ(脆弱性)評価に取り組みます。これらの評価を踏まえて、大規模災害が地域へ与える影響についてリスク工学的評価を行います。さらに、災害時における情報収集、最適な避難経路や物資支援法の提案および災害と経済的損失の関係などを検討した上で、総合的な社会レジリエンスの評価を行います。これらの評価指標に基づいて地域社会の特徴を考慮した防災計画を定量的に評価し、想定外の大規模災害に対する危機管理の高度化対策を考えていきます。