近年、各国の軍事組織への女性の参加が増えると同時に、ジェンダー関連のさまざまな問題を取り上げる研究が増えてきています。いわゆる政軍関係(civil-military relations)を含めた「軍隊と社会」の関係を広く扱う研究分野においては、1980年代からジェンダー統合(gender integration)に関する研究が進展しました。冷戦終結後の1990年代以降は、単なる男女平等の視点からだけではなく、軍事組織における人材の多様性管理(diversity management)の観点を取り入れた研究もみられるようになりました。現代の国際社会におけるジェンダー規範(性別役割分業意識)は「男女ともに働き、家事・育児に従事する」という考え方に変わりつつあります。2000年に国連安保理決議第1325号が採択されて以降は、安全保障の分野でも「ジェンダー主流化(gender mainstreaming)」を推進する動きがNATO加盟国を中心に加速化しています。
日本においても、1999年に男女共同参画社会基本法が制定されて以降、男女共同参画関連施策が実施されてきました。自衛隊においては、女性自衛官の比率も現在では約6%に増加し、女性自衛官の配置制限の見直しや海外派遣任務への女性登用、ワーク・ライフ・バランス施策の充実などが進展してきました。2016年4月には女性活躍推進法も施行され、翌年4月には防衛省が「女性自衛官活躍推進イニシャティブ」を発表し、女性自衛官比率の増加や配置制限の事実上撤廃方針を明示するなど、官民を挙げて女性の活躍の場をさらに広げる努力がなされているところです。
グローバルセキュリティセンターにおける研究テーマとしては、例えば、大規模震災時等における自衛官家族の社会的支援、いわゆる「家族支援(family support)」関連の研究を推進するとともに、今後、軍事組織の中での女性人材登用の進め方、あるいは、男性側のジェンダー意識啓発教育や、防衛省・自衛隊における人材の多様性管理のあり方などについて、国際的な標準を視野に入れた共同研究を推進する予定です。