卒業生からのメッセージ

修士課程は準備が大切

二等空尉 藤田愛子 第2期卒業(防衛組織行政コース)

藤田愛子

大学では文学部で、社会科学関係の素養のなかった私は、研究科に出願するに当たっても、大丈夫かどうかと心許ない思いだった。幸か不幸か入校を許可されたが、はたせるかな社会科学の基礎的な勉強からしなければならないのは大変だった。おそらく指導してくださった河野先生は、もっと大変だっただろう。実際私の直接の動機は、若い間にいろんなことをしてみたい漠然とした気持ちと、当時兄の家族が横須賀にいたので近くに行きたいといった不純なものがあった。だがそれとともに、防大出身でない私が自衛隊で防大出身の人たちと勤務をする間に、防大とは一体どんなところか、少なからず好奇心を持ったこともあった。

しかし、研究科は甘くはなかった。今から考えれば当然のこととはいえ、修士論文を書くのは自分で、教官がいちいち課題を出してそれに応じていれば良いというものではない。ある意味では自由な時間が多いが、これは自分の責任で何でもやらねば置いていかれると言うことを意味する。つまり研修とはまったくちがって、学生の自主性に任されている部分が大きいのに、驚いたりとまどったりもした。

修士論文を書くという作業も、やってみるまで自分はよくわかっていなかったと思う。それまで論文というものを書いたこともなく、学問的に厳密に物事を論証し組み立てていくのはやはり大変だった。大きな論文を書くのには、いい加減にとらえていた概念をしっかり確認するとともに、闇雲に書き始めるのではなく、議論に見合った論文の枠組みをきっちりと作り上げねばならない。河野教官のマンツーマンの指導が、ありがたかった。

2年の間には、技術戦略論担当の非常勤講師、上田愛彦先生のお世話でアメリカ研修にも出かけた。これは私自身には楽しい思い出である。また論文のテーマを「航空自衛官のジェンダーの構築」したのは、自分の体験に則して考えても、婦人自衛官について体系的に考えることに意味があると思ったからだが、研究の一環として行った面接調査は面白かった。たくさんの婦人自衛官にインタビューして、時には話が面白くて、何度も調査目的から脱線してしまい、教官に必要な話をしてくるように指導されたことすらあった。だが、自分なりに婦人自衛官のあり方に考えを深められたと思う。

2年間の課程を終えて今職場で振り返ると、この2年間に得たのは、自分なりに深く物事を考えて、環境や人間関係に支配されるのではなく、自分なりの考を以前よりは持てるようになったことではないかと思う。もちろん2年間の研究で得られるのものはひと様々だろうが、学問とはそれなりの問題意識を持って自主的に取り組んでこそ意味がある。自分自身にどういう意味があるのかよく見定めて、入校のタイミングをよく考え計画的に受験した方がいいと思う。そして、いい加減な気持ちで2年間を過ごせば、研究科や自衛隊にとって望ましくないだけではなく、自分自身にとってプラスとはならないことを強調しておきたい。後に続く人たちの健闘を祈ります。

藤田愛子
1971年大阪生まれ、1985年同志社大学文学部英文学科卒業。同年4月航空自衛隊幹部候補生学校。第1航空団基地(浜松)業務、群施設隊を経て防衛大学校安全保障研究科。現在北部航空方面隊司令部(三沢)装備部施設課勤務。

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