卒業生からのメッセージ

自己投資のための二年間〜防大総合安全保障研究科の二年間を終えて〜

二等陸佐 松本正則 第9期卒業(戦略科学コース)

実務の場を離れて、防衛大学校総合安全保障研究科第9期生として入校し、2年間にもわたり修学できる機会を与えられ、安全保障に関する幅広い視野、高度の専門知識、合理的な問題解決方法を修得することができたので、本教育は、じ後の職務の遂行に極めて有意義なものであったと思います。また、情熱溢れる先生方のご指導の下、様々な実務経験を積んだ学生がアカデミックな議論を行い相互に啓発しあえたこと、機会を見つけては第9期生としての懇親を深め融和団結を図れたことは、今後の人生における大きな財産になったと思っています。私は、総合安全保障研究科を修了できたことに誇りを持ち、今後の職務に邁進する所存です。

今、あらためて、この2年間をふりかえれば、修士論文の作成が、やはり、本研究科の最大のイベントであったと思います。私は、陸上幕僚監部、在日米陸軍司令部陸上連絡官等の実務経験を積み、その経験に基づいた相応の知識を保有していると認識しており、その知識を活かせば、修士論文も比較的、容易に作成できるのではないのかと、当初、思っていましたが、論文の作成過程で、指導教官やプロジェクトの教官との白熱した議論を通して、アカデミズムの強烈な洗礼を受けることになりました。具体的には、本質をついた問題の提起、その問題解決のための方法論や分析視角の構築、膨大な量の先行研究のレビュー、論文のオリジナリティとその学術的な意義の探索、データとしての事例の選定理由等に関して、相当な時間を割かなければならない状況となり、論文の展開や結論を予測できないという窮地に追い込まれたことが幾度もありました。特に、実務経験で得た知識に依存しようとする学生にとっては、私に限らず、果たして、今まで自分が経験し蓄積してきた知識とは一体何だったのか、この知識を社会科学の学問の領域で意義づけし、その学問の用語で翻訳するにはどのようにしなければならないのか、ということで悩んだのではないでしょうか。このように、修士論文は、疑いもなく、全ての学生が悩み、苦しみながらも作り上げた本教育の集大成(成果物)だと思います。我々は、このような場を通じて、実務において直面する問題点の本質を見抜き、合理的・科学的に深く考察する能力を得ることができたのであり、この点において、総合安全保障研究科における修学は、卒業後の新たな職務をより創造的に、効果的・効率的に実施するための事前準備(訓練)の期間であったと思います。

最後に、在校間、情熱をもって教育して下さった、学校長をはじめとする諸先生方、複雑多岐にわたる所掌事務を担当して下さった職員の方々に対して、第9期生一同、心から感謝申し上げるとともに、総合安全保障研究科の益々のご発展を祈念いたします。

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