卒業生からのメッセージ

総合安全保障研究科を振り返って

防衛大学校戦略教育室 二等陸佐 河木 邦夫 第10期卒業(国際安全保障コ-ス)

振り返るとこの2年の月日は、充実したとても有意義な日々であり、40代の学生としては、何よりも代え難いものでした。

何がそのようにすばらしかったかというと、安全保障の研究を通じて社会科学の思考法を修得するための充実したカリキュラムと、その道のオ-ソリティ-でもある経験豊富な教官に囲まれ、自由に研究や討議に勤しむことが可能となった環境に自分自身を置くことができたことです。この反面、何事も自分で考え、行動することは、ある意味すべてが自己責任であり、今までの勤務環境との違いから多少とまどうこともありましたが、逆にこのような環境でなければ、自由に討論し自分の関心に基づく研究もできなかったものと確信しています。

さて、そのような中での最大のイベントは、やはり修士論文の作成です。自衛官として奉職して以来、キーワードを使いプレゼンをすることには慣れているものの、問題を提起し体系的な分析の下に事実を客観化し結論へと導き、それを文章にしていくことには不慣れであり、なかなか論旨に独自性や展開力をつけることができずに苦労しました。また、私が最後までこだわったことは、社会人学生であり現職の自衛官として学問をしているからには、学問と運用の融合を図りそこに自分の独創性を見出そうとしたことです。そのため論文のテ-マには、あえて自衛隊の運用に関連するものを選定しました。ただ、自衛隊の運用を前面にだしはしたもの、それを学術的なものへと引き上げていくところに試行錯誤がありましたが、なんとか学問の領域にまで引き上げ書き終えたときには、その達成感もひとしおでした。まさに、このような機会を通じて脳漿をしぼって考えることにより、脳を鍛え、知恵をつけていくことが上述した社会科学の思考法の体得へと繋がるのです。

当然、そこには、我々学生に対して親身な指導をしてくださった教官をはじめ学校職員の方々、加えて同期の支えがあったことは言うまでもありません。同期については、従来の同世代で同じ出身母体から成る一般的な同期とは違い、20代から40代までの陸・海・空の自衛官を主体に、内局の部員、他省庁や民間企業、留学生などバックボ-ンが全く違う者が同期となったことは、ある意味新鮮であり、互いに刺激しあうことにより、それが研究に深みを与えるきっかけになりました。本当に感謝しています。

卒業式の日に学校長は、国際化、高度化する世界の安全保障環境の中で、防衛省は政策官庁へと実を築く必要があり、その人材養成を防大は担いたいと言われましたが、私は、その言葉を忘れることができません。私は、学校長のその言葉を深く噛み締め、卒業生としての誇りを持ち、更なる自己修練を積み、今後の職務遂行に精励していくことこそが、我々卒業生に課せられた使命であると考えています。

最後に、このような環境に身を置き、自己修練しようと考えておられる方には、ぜひとも振るって本研究科にチャレンジされることを期待しています。

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