卒業生からのメッセージ

総合安全保障研究科で学ぶ意義とは何か

陸上自衛隊幹部学校戦術第2教官室 二等陸佐 瀬川 博司
 第11期卒業(国際安全保障コース)

防衛大学校を卒業して約20年間自衛官として勤務してきましたが、この間の国際社会は、冷戦〜ポスト冷戦〜ポスト9.11と今もダイナミックに変化し続けています。また、演習場の中に限られていた自衛隊の活動も、ペルシャ湾とカンボジアを皮切りに東チモールやイラクへと、国外で活動することが当たり前のような時代となりつつあります。

このような流動的な時代において、我々自衛官が「総合安全保障研究科で学ぶ意義」とは何でしょうか。自衛官の仕事は、どのような職務であれ我が国の防衛の一端を担う重要なものですが、その日常は、部隊や市ヶ谷における組織の歯車の一つとして、次々とやってくる業務処理に忙殺されているのが実態です。我々自衛官が「総合安全保障研究科で学ぶ意義」とは、歯車としての業務から離れて修士レベルの研究を行うことを通じて、安全保障の現場における実務経験を複眼的かつ体系的に再構築していくことにあります。

このため、総合安全保障研究科の教官陣には、我が国の安全保障研究における様々な分野の第一人者が揃っており、これらの先生方のドアをノックさえすれば、様々な知的刺激を受けることができます。もちろん学問の世界は奥深く、必要とあれば部外の専門家を紹介いただき、「幹部自衛官+修士課程学生」の立場と信用をフル活用して、我が国の安全保障研究の最先端を探求していくことも可能です。

また、総合安全保障研究科の特徴の一つは、外の世界に対する門戸の広さです。学校が企画する大阪大学大学院や韓国国防大学院との合同セミナーや海外の研究者を招いたセミナー等だけでなく、自ら時間を作って各種学会や東京大学や慶應大学等が開催する公開講座に参加して、様々な人と議論を交わすことができます。さらに、インターネットを通じて、防大にいながらにして日本全国や外国の研究者と軽易に意見を交換していくことも可能な時代となっています。

現代における知的研究は、部屋にこもって本や論文にかじりつくだけでなく、より多くの人々と知見を交換して、これらを自分の頭の中で再構築させていくことが求められるものです。総合安全保障研究科で学ぶことは、修士論文を書くための知識・手法だけでなく、新たな知の世界へつながる「どこでもドア」の使用法といえるでしょう。

また、総合安全保障研究科の研究室には、陸海空自衛官だけでなく海上保安庁やマスコミ等からの研修生、各国からの留学生といった様々な経験と知見を持った学生が集まってきます。色々な学生と意見を交換しあうことにより、研究室で過ごす日々が自衛隊の当面の課題である「統合」「軍民関係」「国際貢献」について総合的に考える場となります。

もちろん、防衛大学校の課程としての総合安全保障研究科での研究テーマは、軍事関係が中心となります。しかし、卒業論文一覧を見ればわかるように、理論研究、地域研究、組織研究、制度研究、歴史研究、社会研究等々、あらゆる自衛官が勤務する全ての分野が研究対象となるといっても過言ではありません。

これまでの勤務経験を総括し、自らの器を一回り大きくして次のステップにチャレンジしたいと考える方は、是非、総合安全保障研究科の門戸を叩いてみてください。2年間の充実した研究生活だけでなく、卒業後も、自衛官として、人間として、一ランク上の人生がきっと待っていることでしょう。


「謝恩会にて(#11学生一同)」

「謝恩会にて(#11学生一同)」

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