卒業生からのメッセージ

国際的な活動のための貴重な教育機会

防衛大学校 防衛学教育群戦略教育室 准教授 2等空佐 柳田修
 第12期卒業(国際安全保障コース)

1997年4月に始まった総合安全保障研究科も、我々12期から総合安全保障研究科「前期課程」と呼ばれるようになりました。前期課程となったのですから、当然、後期課程が新しく設置されたのです。実際の後期課程の開講は我々12期より1年遅れましたが、修士課程に当たる前期課程と博士課程に当たる後期課程という、2段階の教育体制が総合安全保障研究科にできたことになります。

私が感じた総合安全保障研究科の特徴は、日本でもトップクラスの密度の濃い研究ができる課程だということです。総合安全保障研究科の教官は、我が国の安全保障研究の第一人者が揃っており、防大としても引き続きその陣容を拡充しています。また、総合安全保障研究科前期課程は一般の大学で言うと文系の課程ですが、理系出身の者にも門戸を広げて教育を行っています。特に、我々12期からは、大学審査・学位授与機構から付与される「修士」の学位を卒業までに得るという目標から、修士論文の学内審査を、従来の2月から前倒しして10月に行うことになりました。理系出身者や留学生が在籍するなかで、このような短期間で成果を挙げられるのも、この課程が効率的・効果的な教育を行っている証左であると考えます。受験を考えている理系出身の皆さんも、心配せずにトライしてもらいたいと思います。

また、この課程の学生は、陸海空の2尉から2佐までの幹部自衛官や、各国軍からの留学生、他省庁からの委託教育者など、年齢的にも地域・職域的にも幅広い陣容で構成されています。これら学生間の交流は、研究以外にも人生における大きな財産となることは間違いありません。特に、留学生は慣れ親しんだ母国語ではなく日本語で研究論文を作成しており、彼らの意欲的な姿勢に接することは、われわれ日本人にとっても良い刺激となると思います。

平成19年6月に報告された「防衛力の人的側面についての抜本的改革報告書」では、現在の自衛隊を取り巻く環境から、安全保障理論や国際情勢等に精通した自衛官をより多く育成することを求めています。更にこの報告書は、諸外国の軍隊に比較し、幹部自衛官の修士以上の学位保有者が極めて少ないことも指摘しています。つまり、総合安全保障研究科前期課程は、国際的な活動を行う幹部自衛官、特に修士以上の学位を持っていない運用職域の幹部自衛官への貴重な教育の機会となっていると言えるのです。しかし過去の卒業者を見てみると、必ずしも運用職域の自衛官が多くを占めているとは言えません。諸外国の軍隊と同程度の教育レベルを確保するためにも、多くの運用職域の幹部自衛官がこの課程にチャレンジすることを期待しています。



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