卒業生からのメッセージ

迷った時は厳しい道を

総合安全保障研究科 後期課程 特別研究員 
 安孫子(坂田)慶子 第14期卒業(国際安全保障コース)

 「迷った時は厳しい方を選びなさい」と仰ったのは、入校直後の我々14期生に履修ガイダンスをされた研究主事の先生でした。これは科目履修だけでなく、その他のことにも当てはまります。人生には様々な岐路があり、その度に私たちは何らかの選択を迫られます。その際に、楽に見える道を選ぶか、厳しそうな道を選ぶかは人それぞれ、状況によっても異なるでしょう。厳しい道を選ぶには勇気が要りますが、後になって、「あの時、厳しい道を選んで良かった」、「回り道をしたけれど、そのお陰で今の自分がある」と思えることがあります。総合安全保障研究科(安保研)で学ぶことは、ここで学んだ多くの人にとって、そのような厳しい道だったのではないでしょうか。

  14期生の多くは理系出身で、留学生が3名。これまで政治学や国際関係を学んできだ私にとっても、わずか2年弱(実質的には約1年)で修士論文を完成させるのは厳しい道でした。同期生諸氏にとって、その厳しさは並大抵ではなかったでしょう。これをやり遂げることができたのは、各個人の未知のことに挑戦する気概と目標を達成しようとする努力だけでなく、安保研の組織的かつ効率的な教育プログラムと独特な修士論文指導のお陰に他なりません。

 論文指導の場では、一人の学生に対して、安全保障の各分野で一流の教官10余人が、自分では想像もつかないような観点から、鋭い指摘や助言を下さいます。この論文指導を1年間受けることで、最終的に修士論文が完成しますが、どんなに的確な指摘や助言を得ても、自分の中にそれを受け取って昇華する「受け皿」がなければ意味がありません。その「受け皿」を養うには、専門科目の授業を受講することが基本ですが、それに加えて様々な職務経験や考え方を持つ同期生・留学生との日常的な交流はとても有益で、楽しいことです。深夜まで、時には徹夜で文献を読んだり、熱心に論文に取り組む同期生諸氏の姿にはいつも励まされました。また、親切かつ丁寧に指導して下さった先生方には感謝の気持ちで一杯です。

  防衛大学校の研究科は、主として幹部自衛官や防衛省の事務官・技官向けの高度な専門教育機関ですが、私は自衛官でもなければ、防衛省職員でもなく、一般の文民の立場で、2010年に新設された「特別研究員」制度によって、安保研で受け入れて頂きました。軍事的なものを意図して排してきた日本社会において、私のような一般の文民が自衛官や外国の将校と親しく交流できる機会は、ほとんどありません。日本で安全保障を研究する文民にとって、この安保研は望みうる最高の勉学の場でしょう。私はこの安保研で研究生活を送れることに感謝しつつ、この幸運を研究成果によって社会に還元したいと思います。そして、安全保障を研究する多くの文民の方々が「特別研究員」として、安保研で学ぶ機会を得て、民と軍との交流を通じて相互理解を深めていくことを願っています。

安孫子(坂田)慶子
九州大学法学部卒業、東洋英和女学院大学大学院社会科学研究科修了。シンクタンク、外務省勤務を経て、総合安全保障研究科前期課程(2010‐12年)。現在、同後期課程に在籍。



第14期学生一同(2012年3月18日 卒業式にて)

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