研究科の目的

総合安全保障研究科は、大学卒業もしくは同等以上の資格を有する者に対し、防衛省・自衛隊の任務遂行に必要な安全保障に関する高度の実務的、応用的知識を習得させるだけでなく、社会科学の理論と体系に基礎づけられた研究・分析能力を養うことを目的としている。つまり、安全保障に関する幅広い視野と実践的な問題解決能力を備えた人材を育成する事を教育目標としている。学生は2年間の課程で、それぞれの学問的な関心に基づいたテーマで修士論文を完成させ、大学評価・学位授与機構による審査を経て修士(安全保障学)号を授与される。

したがって、本研究科の課程は、自衛隊の日常の業務にただちに必要な訓練や知識を教えることを目的とした研修とは大きく異なる。広く一般社会や国際社会に通用する見識を備えた人材を養成し、広い視野に立ったプロフェッショナルで大局的な判断のできる実務家を養成するための、体系的な学問研究の場である。入校者には実務経験に根差した鋭い問題意識と、その問題意識を自力で掘り下げることができる学問的な研究のための基礎能力を持っていることが期待されている。

防衛大学からの海の風景

教育のあり方

図書館&給水塔

ここでの2年間は、単に授業を通じて教官から学生に知識を伝達するのではなく、学生自身の問題意識に沿った研究、論文執筆が中心となる。通常、1年生の間は関心のある授業を選択することで、さまざまな分野に関する専門的な知識や研究方法を習得する。これを踏まえて、2年目はそれぞれが選んだ研究テーマに関し、教官の指導を得ながら一次資料や先行研究を含む幅広い文献を研究し、修士論文を執筆する。

授業の大半はセミナー形式であり、英語文献の購読を中心に、学生による報告、討議を軸に進められていく。大学院の教育である故に、学生の自発的な努力が前提となる。学生の時間的な拘束はある意味で緩やかになるが、それは同時に学生の側に強い自己規律が求められることを意味する。とりわけ部隊での生活に慣れた自衛官にとっては、勤務と勤務外の時間の区別がはっきりせず、常に何らかの知的課題を抱えていることは、未経験の新たな種類の規律を意味しよう。また、論文執筆に欠かせない資料も、教官から与えられるものではなく、自分自身で収集に努力しなければならない。現に毎年、何人かの学生が英米などの公文書館での資料収集のため自費で渡航している。

石碑

研究科学生には各人、共同研究室でデスクと書架が与えられ、防衛大学校蔵書の書籍や外交文書などの一次資料を利用できる。またコピー機やインターネットへのアクセスなどの便宜も供与される。だが何よりも重要な利点は、教官の個人的な指導を密接に受けることができることである。

卒業には30単位以上を修得する必要がある。各科目は原則として2単位以上であり、両コース共通の「共通基礎科目」「関連応用科目」、及びそれぞれのコースごとの「コア科目」に分かれている。各学年は共通基礎科目および各自が所属するいずれかのコースのコア科目から12単位以上(うちコア科目から8単位以上)修得しなければならないが、それ以外はどの科目を選択してもよい。また、2年次には修士論文の進歩状況や成果を適宜発表し、複数の教官や学生からコメントや批判を求める「総合研究科目」(前後期あわせて8単位)を修得しなければならない。

外部からの学生・留学生

Korea Naval Academy

本研究科は安全保障を対象として体系的・組織的に研究・教育を実施している、わが国では最初の社会科学系大学院相当という特徴を持っている。そのユニークさを広く活用し、さまざまな背景をもつ実務者間の相互交流をはかるためにも、陸海空の自衛官や防衛省職員に限らず、防衛省外からもジャーナリストや民間シンクタンク研究員、海上保安庁など他の公的機関にも受託教育という形で門戸を開放している。

また、海外からの留学生も受け入れ、国際的にも通用する安全保障研究を目指している。これまでの留学生受け入れ実績は、韓国から11名、カンボジアから1名、モンゴルから2名の計14名(12期まで)である。


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