『The Last Emperor』
今回は副田教官による「映画で考える」でした。上映は「The Last Emperor」、清朝最後の皇帝である、 愛新覚羅溥儀の歴史映画です。監督はベルナルド=ベルドリッチ(イタリア出身)、坂本龍一がテーマ曲を担当し、 さらに甘粕大尉役として出演もしています。
冒頭は、1950年、ハルピン駅のトイレで男が手首を切り自殺を図るところから始まります。彼こそが清の皇帝、 宣統帝である溥儀であったのです。第二次世界大戦時日本に味方した彼は、終戦時にソ連に捕まり、社会主義体制の下の中国で、 戦犯として戦犯管理センターに収容され、「人間改造」を強いられ、裁かれることになるのです。
彼は西太后の後を継ぎ、3歳で皇帝になりました。広大な紫禁城で、3歳の皇帝に対して何百人もの重臣がひれ伏す場面があります。 三跪九叩頭(さんききゅうこうとう)という皇帝に対する最高儀礼だそうです。そんな小さいころから皇帝として、 天子様として扱われてきたので、少年の溥儀は我がままで、やりたいほうだいやっていたようでした。 しかし、乳母離れがなかなかできない一面も見せています。
そんな少年溥儀の転換期が、二回あったように思われます。 一つは、孫文を中心とした革命勢力が辛亥革命で清を倒し、 共和制国家を樹立し、弟の溥潔に「もう兄ちゃんは皇帝なんかじゃない」と言われたとき。 そのとき、彼は側のお付に墨を飲ませ、自分はまだ皇帝であると証明しようとしたのです。 しかし壁を登り外の世界を見て、車に乗った自分とは別の皇帝を見つけます。愕然とする溥儀は哀れでした。 紫禁城の中だけの皇帝になってしまったのです。もう一つは、家庭教師のレジナルド=ジョンストンと出会ったとき。 彼は西洋の知識を身に付け、外の世界に目を向けるようになるのです。 ジョンストンは後に、このときのことを『紫禁城の黄昏』に書いています。
1924年に、溥儀はとうとう紫禁城を追放されてしまいます。天津に移り住み、スーツを着て、 ダンスに興じる毎日を過ごしていたところに、日本軍部の甘粕大尉が近づいてきたのでした。満州事変の直後の1932年に、正妻らの反対を押し切り、 日本の傀儡政権満州国の執政となり、その2年後には皇帝となりました。しかし日本軍部は露骨に内政干渉をし、 彼自身も罠にはめられたことに気づくのです。1937年、中国とのあいだに本格的な戦争が勃発すると、満州国は日本軍の戦略上、 工業上の基地として否応なしに組み込まれていきました。1945年8月15日、日本が連合国の前に無条件降伏した日、 甘粕大尉はビストルで自殺、溥儀は日本へ脱出しようとするが果たせず、ソ連軍に捕らえられ、戦犯として裁かれることになるのです。
戦犯収容所での溥儀は哀れそのものです。自分で身の回りのことをしてこなかった彼は、自分で靴の紐も結べず、ボタンもはめられない。 そんな今までの生活とは正反対の環境のなか、彼は何を考え生きたのでしょうか。
1959年、10年間の収容所生活を終えた彼は、庭師となり、一市民として生活していました。今は観光地となった、 かつて過ごした紫禁城を訪れる。昔を懐かしみ、玉座に座り、管理人の息子に幼い頃隠した箱をわたす。 その中からはこおろぎが出てくるのでした。そのこおろぎは何を意味するのか。 その少年が再び顔を上げたときにはすでに溥儀はいなくなっていたのです。
実際の歴史上では、彼は北京で天寿を全うし、1967年10月17日、61歳でこの世を去りました。 この映画は、西洋人が好む東洋のエキゾティズムだけが表に出ているのではなく、細かい描写もしてあります。 満州国の戴冠式の時には、正妻婉容は着物を着、日本髪を結っていました。 今回、2時間40分という長編映画でしたので事後討論はせず、副田教官の解説のみでした。 やはり最後のこおろぎが気になるところですね。この時代の歴史背景、清朝のこと、 満州国のことなど少しでも知ってから観ると面白いかもしれません。先にも挙げましたが、 家庭教師ジョンストンによる、『紫禁城の黄昏』(岩波文庫 青448-1)、溥儀による自伝 『わが半生−「満州国」皇帝の自伝』、映画の原作であるエドワード・ベア『ラスト・エンペラー』(ハヤカワ文庫NF140)など、参考書籍も数々あるようです。 早速、読んでみようと思います。
〜AVホールで考える〜
今回の場所はいつもと違いました。いつもは人文学館の教室を使ってやるのですが、今回は記念講堂AVホールを使いやりました。 AVホールはまるで小映画館。収容人数は多分200前後だと思われます。今回の参加者は約20人。20人で観るには広すぎましたね。 この「映画で考える」も今回で5回目になるんです。実は、私は2回目だったんですが・・・
これからもずっとAVホールを使って「映画で考える」をやるそうなので、今回来なかった方、今まで来たことのない方、 次回から参加してみたらいかがでしょうか。