連合王国研修を終えて


三上 沙智


【はじめに】

 去る10月13日(土)から11月2日(土)までの間、私は連合王国(以下UK)への派遣学生として、各士官学校において各1週ずつ、計3週間の研修をして参りました。

【日本とUKの比較】

 まず初めに日本における防大と、UKにおける各士官学校の位置付けの違いについて少し説明します。明らかに異なる点は、我々は防大で学士を修得するという一般大学的な面を持ちますが、UKの士官学校は一般大のような要素を持たず、完全なる軍教育機関であるいうことです。即ち、UK各士官学校への入学者は、主に一般大卒者というわけなのです。(各士官学校における学生全体の割合が大卒約80%、高卒約10%、部内約10%)また、在学期間が陸・空が約6ヶ月、海が約1年となっており、学年はJunior,Intermediate,Seniorの3つのTermに分けられています。1Termの期間は各士官学校によって多少の違いはありますが、立場としては全て同様で、防大の1学年がJunior、2,3年がIntermediate、4学年がSeniorというような位置付けがされており、Seniorの学生には既に士官候補生としての階級が与えられていました。言わずともお分かりになるかもしれませんが、防大同様、Juniorの学生は毎日非常に忙しく、スケジュールも過密に組み入れられていました。これは、軍隊における基本的事項を習得させると共に、士官としての強固な意志を確立させる為の訓練だと、我々のエスコート学生が話していました。

【海軍士官学校】

 初めに向かったのはBritannia Royal Naval College (以下BRNC)と言われる海軍士官学校でした。ロンドンから鉄道を使って約3時間程の所にあるこの学校は、小高い丘の上に、日本の海幹校(江田島)の建物と非常に似た建物を構える、非常に美しい所でした。後からエスコート学生に聞いた話しによると、日本の海幹校とBRNCの建物は、同じ建築家によってほぼ同時期に設計されたものである為、その資材などはほぼ同じ物を使われており、その多くはUKから日本へ運ばれた資材だそうです。決して日本がUKの真似をして建造させたものではない、と丁寧に説明してくれました。日英両海軍の古い歴史を感じさせる一幕でした。

 約1週間の研修において、私は様々な講義や訓練を研修させて頂きました。海軍ということで、小型ボートを指示通りに動かしたり、小型船で隣の港まで航行訓練をしたりする実践的な訓練をさせて頂きました。航空要員である私にとっては最初で最後になるであろう、非常に貴重な経験をBRNCで体験することが出来、私は幸運であったとしみじみ感じました。BRNCにおいて最も印象に残った研修に、Basic Readership Trainingが挙げられます。これは陸地における基本的な作戦実行能力を養う訓練の一つで、学生は5〜6人で1グループとされ、リーダーが一人ずつ指導教官に指名されます。その指名された学生は様々な状況を与えられ、それに沿った作戦を制限時間内に実行するという訓練でした。我々は、その訓練に1列員として参加し、リーダーに指示された事項を他の学生と共に実行するチャンスを頂きました。全部で5〜6の状況がありましたが、内容は決してやさしい物ではなく、体・知力共に高いレベルを要求され、学生は1人ずつ10数キロ以上あるであろう背嚢を背負い、その他に2メートルほどの木の棒を4本と、10メートルほどの太いロープを体に巻きつけるようにして持ち運んでいました。それらの荷物は作戦実行の際には欠かせない道具となっており、学生はそれらを各人分担して持っていました。どの学生も迅速な判断と適切な指示を出し、それに従って動いたお陰で、我々のグループは全ての作戦を成功に終えることが出来ました。何ともいえない達成感と、充実感を味わうことが出来、我々3人はあらゆる面において感動を覚えさせられた訓練でした。学生も我々の為に分かり易い英語で何度も説明してくれたり、「楽しんでいるかい?」などと常に気遣いを絶やさずしてくれたりしたことが、非常に嬉しかったです。

【陸軍士官学校】

 次の週は、Royal Military Academy Sand Hurst (以下RMAS)と言われる陸軍士官学校へ行きました。ここでも、最初で最後かもしれないUK伝統のDinnerを経験してきました。これは防大でいう会食なのですが、規模や位置付け、また形式が全く異なっています。会食の会場は長机がずっと並ぶ大きなホールで、照明はランプの灯りという、幻想的な雰囲気の中での夕食でした。お料理はフルコースで前菜から始まり、最後のデザートまで美しく調理された品が運ばれて来て、ここは士官学校の中なのだろうか?と思わせる程素晴らしいものでした。食事が終わると生演奏が始まりしばしの休憩。その後Portと言われるポルトガル産の赤ワインが出てきて、出席者が全員立ち上がり、"Queen"と言いつつ乾杯をする…という、王国ならではの習わしを直に見ることが出来、これもまた貴重な経験になりました。文化の違いによって、ここまで差が出来るものか…とつくづく考えさせられたものです。
 この他に、もう一つ日本とは大きく違っている点がありました。それは、訓練を競技会形式で行うという点です。私が知る限りでの訓練は、競技会形式の物はなく、それが評価の対象になることはあっても、大きく表彰されたり、目に見える形で評価されたりすることはないと思います。しかし、それをUKでは行っていた為私はその点に非常に興味を持って見学していました。射撃にしても、自分に与えられた的のみを狙うのではなく、4人一組になって約100メートルを走り、射線まで到達するとそこで寝撃ちの姿勢をとり、合計8つの的を撃ち抜くという形式の競技がありました。私が感じたのはこの競技をすることによって射撃技術はもちろんのこと、チームワークを学ぶことが出来るということもあり、素晴らしい訓練であると感じました。このように、訓練も工夫することによって、様々な要素を含んだ有意義なものになると知り、このような良い点については日本でもぜひ取り入れてみてはどうかと思いました。

【空軍士官学校】

 最後の週はRoyal Air Force College Cranwell (以下RAFC)と呼ばれる空軍士官学校に行きました。ここで一番印象に残っていることは、様々な情報収集機材や多機能のカメラなどを展示した博物館を校内に持っていて、そこを見学したことです。情報大国と言われるUKならでは…と思いつつ、ありとあらゆる機材を見せて頂きました。このように我々に見せると言うことは、これらはもう使われていないか、既に最新鋭の機材が取り入れられているのだろうと予測することが出来、自信を持って説明して下さった方の顔を見ては、競争は常に続いているのだと痛感したものです。

【終わりに】

 私は、人間文化学科で異文化コミュニケーションを学ぼうと志していましたが、実際に海を渡り、国の壁を越えてその世界に入り込んでみると、机の上で学べない事が非常に多いと言うことを、改めて感じさせられました。食文化(陸軍でのDinner)、民族文化(Scottish…スカートとEnglish…スラックスは、正装が異なる)、階級制社会(昔の身分階級の名残があり、話し言葉や来ている洋服にも差が見られた)などなど、UKでしか見られない一面も垣間見ることが出来、非常に興味深く研修することが出来ました。
 この他にも、もっと多くのことを多くの人に伝えたいのですが、それを全て書くほどのスペースもありませんので、この辺り終わりとさせて頂きたいと思います。この他に正式な文章として、平成14年度派遣成果報告書という冊子が発行されます。そちらには、細部に渡って士官学校の組織や細かな規律、日課、訓練についてなどが記載されますので、ご興味を持たれた方はぜひそちらも御覧下さい。
 最後に、私にこのような素晴らしい機会を与えてくださったことに心より感謝し、人間文化学科ホームページ用派遣成果報告を終えたいと思います。


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