今回のインタビューは我がアラビア語の教官、尾崎教官です。3学年は担当してもらったことが ありませんが、イスラーム言語文化論を担当してらっしゃいます。私にとってはお姉さんのような 素敵な方でいろいろ影響を受けています。 杉山:アラビア語と言うのは、日本の大学ではなかなかあつかっていない語学ですが、教官はなぜ アラビア語を始めようと思われたのですか? 尾崎教官:もともとブラック・アフリカをやりたいと思っていました。日本でアフリカをやるため の方法として、父親からアラビア語を学んでおけば、そっちの研究につながるといわれたのですが、 実際アラビア語を使用している北アフリカ地域にはまってしまった(笑)。当時アラビア語は難し いし、コーランやハディースの内容も難解だし、辛くて辛くて。けれども19才の夏に、チュニジア に一人語学留学にいって、向こうの人たちと付き合ってものすごい衝撃を受けて。"よくわからない けどこんな烈しい衝撃を受けたからには、よく分かるまで逃げちゃいかん(くやしいから)"と。 今の今でも分からないことがたくさん出てくるから、この先も"逃げちゃいかん"。奥深い地域をや れて幸せです。 杉山:ブラック・アフリカですか。なかなか聞かない分野ですね。尾崎教官は中東のどのような分 野を研究してらっしゃるのですか? 尾崎教官:中東地域の中世の食生活について研究しています。人々の生活の有り様を知りたかった んですけど、担当してくれた教官にフィールドワークは向かないといわれ、文字資料から研究して いくことにしました。生活史と言うのはまだまだ新しい分野です。歴史なんかでよく、スパイスは どこからどこへ運ばれたとかは習いますけど、実際それが個人一人当たりどれだけ消費されていた かはあまり知られていませんよね。それが料理書とつきあわせるとよくわかるんです。食生活を研 究していくにつれ、香辛料の偽(ガセ)があったこともわかりました。例えばグローブと言うスパ スがあるんですけど、これは花のつぼみなんです。それがスペインの料理書では木の皮になってい る(笑)。きっと当時ヨーロッパに出回っていた香辛料類も偽商品が多いと思います。だから山盛 り料理にぶち込まなきゃ風味が出ない。 杉山:食はいいです!私もいろいろな国の料理を食べるのが大好きです。本当は違うものなのに偽 って売っているものって今でもありますね。日本人は地理的な条件などもあって、あまりアラブに ついて知りません。エキゾチック、オリエンタル、ミステリアスなんていう言葉で表現されがちで す。教官は実際に現地に行ってらっしゃいますけど、中東の魅力について教えてください。 尾崎教官:なんといってもマフトゥーハする(心がオープンな)人々です。アラブ人は昔から商売 を営んできていますから、人を見る目を持っています。どれだけつくろっても見破られてしまう。 皆人懐っこく、会話、コミュニケーション、触れ合う時間が多い分だけ、人間としての度量の大き さ、徳の高さが大事だということを実感させられました。わたしの先生は「中東に関して勉強しに 行くなんておこがましい。人間について勉強させてもらって来い」といっておられます。 杉山:なるほど。最近の情勢を見ると、テロとか紛争とか危ないイメージしかないですけど、間違 いですね。もっとよくアラブのことを知って偏見をなくすように努めたいです。私もアラブに行き たくてしょうがないんですけど、今は渡航許可下りませんからね。いつかは絶対に行きたいです。 では最後の質問です。女性として働くことについて一言お願いします。 尾崎教官:家族を持つことが大きなターニングポイントとなります。独身時代に持った目標に向か って頑張っていても、家族ができたら、特に女性はそのままつっぱしることが出来なくなってしま う。女性が働くことに必要なことはと聞かれたら、家族と仕事を持つことはそんなやさしいもので はないという覚悟でしょうか。自分が楽をしている状態だったら、ちょっとおかしい、と思う警戒 心というか。 子供をいいかげんに扱えば後々大変なことになりますし、かといって自分のしたいことを抑圧し てしまったら煮え切らないものが残る。子供と仕事をもっている限り悩み続けます。だからこそ仕 事をしているお母さん友達といった仲間がとっても必要です。 それから、こんな状況では、必ず周囲に迷惑をかけているし、だから本当に周囲の方々のやさし さが身にしみるんです。これは仕事をしていなきゃわからないことだと思います。 杉山:私たち女子学生にとって近い将来のことかもしれません。しっかり心に留めておきます。 聞きたいことはまだたくさんありましたが、時間の許す限り答えていただきました。ますます中東 に興味がわいてきました。尾崎教官ありがとうございました。これからも人間文化学科をよろしく お願いします。