イサム・ハムザ氏(カイロ大学準教授)

『日本・イスラム世界の文明対話の基礎』

平成17年1月24〜28日


 

 人間文化学科では、1月24日から28日までの1週間、エジプト・カイロ大学からイサム・ハムザ氏を講師に招き、特別講義がおこなわれました。
 ハムザ先生は大阪大学大学院で日本近世史を学び、13年間を日本で過ごされました。よって日本語は堪能で、日本について日本人よりも熟知しておられます。そんなハムザ先生の講義は当然、我々学生にとって非常に興味深いものになりました。
   ハムザ先生はまずエジプトの歴史について概説され、学生はエジプトについての大まかな歴史背景と現状を知りました。言うまでもなくエジプトは世界最古の文明のひとつで、早くから古代王朝が成立しました。紀元前3世紀にはローマ帝国に征服され、7世紀になると代わってイスラム勢力の支配が始まりました。以来エジプトはイスラム世界の中心として栄えましたが、18世紀末のナポレオンの遠征から、欧米との接触により近代化が始まります。その後イギリスによる植民地支配を経て1952年に独立し、現在に至っています。エジプトはその地理的位置から、欧米、イスラム、東洋の多様性が並立する、モザイク文化を持っています。
 日本とエジプトの関係は江戸時代にはすでに始まっており、幕末には武士の使節団がエジプトに滞在し、ピラミッドで記念撮影まで行っています。明治になるとその関係は、欧米との付き合い方をエジプトに学ぼうと、さらに深まりました。エジプトでは、日本人は日露戦争でロシアを破った「東洋の雄」として認識され、親日感情が強いそうです。
 イスラム教といえば、原理主義のイメージが先行し、それがイスラムの姿だと思ってしまうことが少なくありません。しかし本来のイスラム教徒は、信仰心が厚く平等意識の強い敬虔な人々であることを、先生は語ってくださいました。
 最後に、文明とは何か、文明対話に必要なものは何か、といった、外国に接する上で重要な概念をテーマに話され、今回の講義は締めくくられました。
 将来の自衛隊幹部となる我々、とりわけ人間文化学科の学生にとって、異文化への知識・理解、文明対話の要素というテーマは非常に有意義なものでした。外国から、しかも今タイムリーなイスラム圏の知識人からの、日本に対する観点を聴く貴重な機会とあって、質問も次々に飛び出すなど活気ある講義となりました。
 このような貴重な機会に恵まれ、自分の無知無理解を痛感しましたが、これを幅広い視野をもった真の紳士としての出発点としたいものです。イスラム世界の中心エジプトでは、日本は東洋の雄として信頼され、目標とされています。一方彼らによいイメージを持たれている我々日本人は、イスラム世界に余りにも無理解です。アラブ世界は日本が大好きなのに、日本はアラブに対して石油などの利益関係を重視する、「アブラ外交」であるというハムザ先生の指摘が印象的でした。日本はよりよい関係を築いていくためには、ハムザ先生の仰るように相手を認め、受け止める、対等な立場で話し合う「対話」をもっともっと深めていくことが不可欠なのではないでしょうか。
 ハムザ先生は本当に人柄の素晴らしい方で、話し方も、知性を感じさせながらも堅苦しくなく、話し上手でした。最終日の講義が終わり記念撮影の後は、学生からサイン攻めにあっていました。

(寺田 浩)


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