大規模震災工学研究室
地震列島といわれる日本は,何度も甚大な地震災害に見舞われてきた.我々は,この国土に住む限り,地震被害を避けて生活することはできない.一方,我々の生活する社会は過密化し,情報技術等により社会システムが複雑に成長してきている.その結果,地震のような自然の急変による事象に対して極めて脆弱な社会になっている.そして,日本列島では首都直下型地震や南海トラフの連動型地震という大規模地震災害が近い将来に発生すると予測されている.これらの地震が発生した場合は,今までに経験のない「国難」といえる事態を迎えることが想定される.今後の安全で安心な社会を構築するためには,この大規模震災に対して,減災対策・危機管理対策・復旧復興対策を早急に構築する必要がある.本分野の教育では,大規模災害の発生や減災対策・危機管理に関する基礎理論を学び,災害対応に関する基礎能力を涵養する.また,研究においては,大規模震災の特徴である広域・複合災害の特性を解明し,社会の変容による新たな災害様態の変化を考え,今後の大規模震災時に発生する課題の対応計画に関して研究を行う.
教員
主な研究テーマ
広域的斜面崩壊危険度評価に関する研究
我が国は,斜面崩壊が発生しやすい地形・地質条件下にあり,地震を誘因とした斜面崩壊が数多く発生している.そこで,地震発生後の斜面の被害場所や被害規模の早期把握,初動調査の計画策定,二次災害の防止等に有用になると考えられる広域的な斜面崩壊危険度図を作成している.作成した斜面崩壊危険度図により,特定の地震における斜面崩壊の危険度を広域的に把握できる.
盛土の全国地震時被災確率評価に関する研究
一般に,盛土の耐震設計では,決定論的に定められた比較的大きい単一の設計地震動を用いて耐震性能を照査している.一方,実際には,小さい地震の発生確率は高く,大きい地震の発生確率は低い.つまり,発生確率は低いが,想定外の大きい地震が発生することもある.また,地震の発生確率と発生規模は地域ごとに異なる.そこで,地震の発生頻度・規模・発生場所をハザード解析により評価して,地震による盛土の崩壊のしやすさはフラジリティ解析により評価する.これらの結果を用いてリスク評価することにより,全国的な盛土の地震時被災確率を評価している.
超過作用下での挙動を踏まえた橋梁の信頼性評価・設計法に関する研究
設計地震動に対して所要の安全性を確保するだけでなく,設計地震動を超える地震動の作用(超過作用)下でも,すぐに致命的な損傷が生じないように配慮する重要性が高まっている.免震橋を例にとると,受注生産品である免震支承が万一,破断すると,長期の復旧期間を要する.一方で,設計地震動に対しては,免震支承で確実にエネルギーを吸収していても,超過作用下では免震橋としてどの部材をどのように壊すかは評価されていない.下図の検討例では,RC橋脚に対する免震支承の耐力比を1.2程度以上確保することにより,免震支承の破断を回避した上で,免震橋としての安全性が向上することが示されている.