単結晶構造物性グループ(中性子散乱・回折)
大強度陽子加速器施設

J-PARC (Japan Proton Accelerator Research Complex)とは?

 次世代パルス中性子施設です。平成18年度末に完成予定で、現在、急ピッチで建設が行われています。
この中でビームライン設置班として「単結晶構造物性グループ」が設立されました。
 母体は、高エネルギー加速器研究機構のKENSにあるFOXのユーザーグループです。

 田村格良(原研)、 高橋美和子(筑波大)、 阿部 洋(防衛大)


1. はじめに

 パルス中性子で、飛行時間法(TOF: Time of Flight)を用いて回折実験を行う。白色パルス中性子はいろいろな速度 v の中性子があることが最大の特色である。図1のようにいろいろな速度の中性子は検出器までの飛行時間 t が異なる。簡単な計算で、飛行時間と中性子波長の関係がわかる。図2からも基本原理式の意味が理解できる。
 

図1 飛行時間と波長の関係
 
図2 飛行時間と距離の幾何学的関係。

2. 現在のFOX(KENS)の仕様

図3 FOXの概略図

L1=5.68 (m)
L2=0.55 (m)

2θ: 5〜124°
Δ2θ=3.4° (36 Detectors)

磁場(H ≦4T)
低温( T ≧1.5K)
高温( T ≦ 1500℃)
圧力(計画中)  

図4 磁場中測定


3. KENS(FOX)とJ−PARCの比較

 
FOXの入射強度のエネルギー分布を図5に示す。また、J-PSRCでのシミュレーション結果によると強度は100〜1000倍以上になると考えられる。。各種モデレータで計算した場合の入射強度のエネルギー依存性。

図5 モデレータと強度分布


Q空間での強度分布は図6のようになる。

図6 Q空間での強度分布

中性子の吸収: 円柱状のAg(R=0.5 cm)の場合

図7 中性子の吸収
2θの小さいところで中性子の吸収が小さいところがある。

Q分解能



図8 Q分解能
モデレーターの分解能(Δtmod)によって決まる。

FoxでのQの分解能実測地と計算値。J-Parcでの計算値と比較すると、FoxのQ分解能は高角でJ-Parcの2倍ほど悪くなる。

図9 Q分解能の比較

ΔQの分布

図10 Fox(上図)のΔQが明らかに大きい!

モデレータによるdQの違い
図11 モデレータがcoupled(上図)のほうがdecoupled(下図)よりもdQが大きくなる。


実際の測定データ

図12 Foxで測定されたデータ