酵素単分子膜の観察

下図は,酸化還元酵素の一種であるジアフォラーゼをガラス基板上に固定し,基質である NADH を添加したときの距離と電流の関係です.NADH存在下では,微小電極上で酸化されて生成した FMA+が基板上でジアフォラーゼの作用により還元され,FMA が再生されるため,基板に近づくにつれ電流値は増加します.しかし,金属基板に近づけた場合と異なり,FMA の再生反応に NADH が必要であり,基板のごく近傍ではNADH の拡散が妨げられること,酵素反応速度が FMA の拡散速度より遅くなることから減少します.

 

ジアフォラーゼ・アルブミン混合膜のSECM像

下図はジアフォラーゼと牛血清由来のタンパクの一種であるアルブミンをガラス基板上に固定し,ジアフォラーゼの基質であるNADH 存在下で400x400ミクロンの範囲を走査して得られたSECM像です.スタンディングアプローチ(STA)モードで走査を行った場合,下の左図に示すように斑模様が観測ます.電流値の大きい部分がジアフォラーゼの表面濃度が大きい部分と考えることができます.この領域の中心付近の200x200ミクロンの領域(左図の実線で囲った部分)をフィードバック(FB)モードで走査したとき得られたSECM像が中図です.基板のごく近傍 (約50 nm) で電流を測定してるため,電流の高低があまり見られません.FBモードで走査した後,再びSTAモードで400x400ミクロンの範囲を測定したところ,FBモードで走査した部分の電流値が小さくなりました(右図).これはFBモードにより表面の酵素がはがされてしまったためと考えらます.