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防衛大学校 応用化学科 応用物理化学研究室

CIW留学記

CIW留学記 〜第3回クリスマス前〜

 今年ももう残り少なくなり、お忙しく過ごされていることと存じます。こちらでは、クリスマスということで、お店やなんかはクリスマスの派手な飾りつけをしていてきれいです。DCでは11月に入ってあっというまに気温が下がって、11月の最後の週にはとうとう初雪が降りました。TVの天気予報によると、これが標準的な降雪時期らしいです。
 
 研究の方は装置のクセも分かってきて、馬力が上がってきています。ただ、ここのポスドクはやはり優秀で、私よりちょっと前に来た人がもう論文を書いて投稿していました。やみくもにやれば良いと言う物ではもちろんありませんが、私は能力のない分、時間でカバーするしかないなと思っています。私にまず最初に与えられたテーマは、広い温度・圧力領域で新しい氷の形態を色々な分光装置を用いて探るというものです。

 一口に氷といいましても、我々が普段冷蔵庫などで目にする、いわゆる常圧氷(氷I)の他にも色々と構造の違う氷の形態があります。ちなみに現在までに知られているところで12種類(氷IからXIIまで、準安定状態を含めればもっと)もあります。その中で氷I(とその派生形の氷XI)だけが、水よりも密度が低く水に浮かびますが、その他の氷は全て水に沈みます。最も密度の高い氷は氷Xで氷Iの密度の約2.7倍ほどです。ここまで密度が高くなりますと、もう分子性は失われてしまい水素が酸素間の中央に位置して、O-H-Oのイオン性を持つ原子的な構造になります(対称氷)。

 また広く太陽系にまで目を向ければ、木星より以遠の軌道にある惑星の衛星や月のなかには大部分が氷(VIやVII、格子の隙間に別の格子が入りこむ、いわゆるセルフクラスレート構造)でできているものがあることが分かっています。丁寧に温度と圧力を制御しながら観察すれば、氷はまだまだ違った側面を見せてくれそうです。

 ところで、ここのリサーチスタッフを見ていて研究所らしいなと感じたのは、なにかちょっとしたことがあると、”忙しいから、、、、”というエクスキューズをよく発することです。その忙しさの原因は、なんとかの締め切りがあったり、装置の使用許可の為のプロポーザルを書いていたりで自分の研究に関連したもろもろで、忙しいのは当たり前じゃないのかなと思っちゃいます。その割には普段と同じ頃に帰宅しているような気が、、、。
私達、普段大学に勤めるものからしてみると会議もないですし、雑用もないし、もちろん講義もないのに、このあたり大分感覚が違うなと感じました。

 その他、アメリカ人らしいなと感じたことは、”アメリカのイラクに対する攻撃の是非について、ブッシュ大統領が国民の意見を聞きたいと言っているから皆の意見を電話して言おう”というメールが(わざわざ)研究所のメーリングリストを使って回って来たことです。このことについて別のある人は、”まだ200万人足らずしか意見を言ってないそうだ。なんて恥ずかしいことなんだ。皆も知人にこのことを知らせよう。”とかなんとか。

 ここの研究所はこじんまりしていてまとまりがいいのか、パーティなんかの行事がよくあります。先々月はバーベキューパーティとやらで、昼からずっとバンド演奏から始まって、とても盛大でした。私は全然知らなくて実験してましたので、何が始まったんだろうとびっくりしました。
 先月はmud cupなる研究室対抗のサッカーの試合が開催されて、その後は当然?お疲れ会なる、飲み会へと、、、。そして今月は数年に一度あるという、カーネギー財団のお偉方(trustee)が大挙視察に来られまして、食事会なるものに参加させてもらいました。ところが、彼らのために演示実験なるものをしなさいとボスから言われまして、2,3日前からそのためのポスターを作ったり、レジメを作ったりして結構大変でした。ボスもさすがにこの日はめずらしくナーバスでした。実際に彼らにも実験を体験してもらいました。まさか留学先に来てまで”学科紹介”をするなどとは思いもよりませんでした。
 どこに行ってもこのような”行事”から逃げられない運命にあるみたいです。ただ、この日は米国東海岸に大雪の降った日で朝起きてみたら、あたり一面銀世界でした。降雪量は6インチと言ってましたから、約15センチ程度でしょうか。この日(翌日も)は官公庁をはじめ、近郊の全ての小中高大学校が休校になりました。しかしながら、上記の理由でどうしても研究所に行かなければなりませんでしたので、雪をかきわけ、かきわけ、いつもより大分時間がかかってやっとたどりつきました。そして最後に、今日はクリスマスパーティが行われました。ただ、このパーティには一応所内全員が参加するのですが、立食形式なのにいわゆるブルーカラーの人達は、我々とは少し離れた場所に追いやられて?、しかもわざわざつい立てなんかで仕切きられたところで食事をしていました。なんか複雑なものを感じました。

銀世界

そういえば、今年は初めて海外で新年を迎える年になります。
来年が皆様にとって良い年でありますように。
来年もよろしくお願いいたします。


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