非平衡状態のイオン液体中における水の挙動

　イオン液体は塩であるにも関わらず、有機カチオンと無機アニオンなどのを組み合わせることで、室温において液体状態を示し、水や有機溶媒とも異なるイオンのみから成る新しい液体として注目が集まっている。液体でありながら蒸気圧を無視できることや高いイオン伝導性など様々な機能を有するイオン液体の性質を理解するための研究、さらには進んでこれを溶媒や高機能性物質(電解質)として利用する研究が行われている。我々は最近の研究(J. Phys. Chem. B, 113, 8091, (2009))で、あるイオン液体中において、水分子はバルク水中のように水分子同士で水素結合ネットワークを形成せず、水素結合がほとんど切れた状態の孤立分子として存在していることを見出した。さらには、液体窒素温度に冷やしてもこの孤立水分子は、結晶状態(氷)にはならずにそのまま(凍らない水)の状態で維持されていることを発見した。このような基礎的な研究をもとに、イオン液体の本質(クーロン力が支配的であるのに、なぜ常温で液体なのか?)にせまり、最終的には逆に水分子を機能性物質として積極的に使用し、高機能・高性能液体(材料)を創製することを目標にしている。



【関連する論文】
・Orientational Ordering of Crystal Domains in Ionic Liquid based Mixtures
　(J. Phys. Chem. B, 112, 9841-9846 (2008))
・X-ray Diffraction Study of Ionic Liquid based Mixture
　(J. Phys. Chem. B, 113, 2013-2018 (2009))
・Existence of Nearly-Free Hydrogen Bonds in an Ionic Liquid, N,N-Diethyl-N-methyl-2-methoxyethyl
　ammonium TetrafluoroborateーWater at 77 K
　(J. Phys. Chem. B, 113, 8091-8095 (2009))
・Anomalous Conformational Change in 1-Butyl-3-methylimidaozlium Tetrafluoroborate-D2O mixtures
　(J. Phys. Chem. A, 116, 1208-1212 (2012))
・Direct Evidence of Confined Water in Room-Temperature Ionic Liquids by Complementary Use of
　Small-angle X-ray and Neutron Scattering
　(J. Phys. Chem. Lett., 5, 1175-1180 (2014))
・Properties of Water Confined in Ionic Liquids
　(Sci. Rep., 5, 10619 (2015))
・Polymorphs in room-temperature ionic liquids: Hierarchical strucutre, confined water and pressure-induced frustration
　(J. Mol. Liquids, 210, 200-214 (2015)

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