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〒239-8686 神奈川県横須賀市走水1-10-20
防衛大学校 応用化学科 応用物理化学研究室

研究内容 「高圧下の粘性率測定」

装置開発及び物性測定(Jones―Dole B係数)


 私(Y.Y)が大学院時代に所属していた研究室は、高圧生物物理化学系の研究室です。大腸菌の生育環境に関する研究から、タンパク質の安定性、さらにはその生育環境としての水・水溶液そのものの構造に関する研究まで幅広い分野が研究対象でした。私はその中の水溶液分野の研究に携わり、研究生活をスタートさせました。独自に設計製作した転落球式高圧粘性率測定装置を用いることにより、幅広い条件下での測定を可能にし、溶媒の構造に及ぼす電解質の影響を統一的に明らかにすることが目的です。数千気圧の高圧力下で、粘性率に関するJoneーDole B係数を世界で初めて見積もりました。溶液構造に及ぼす塩添加の効果と加圧の効果が等しいことを見出し、定量的に加圧の効果を表すことに成功しました。
                ηr = η/η0 = (1+A√c +Bc)
                        η:溶液の粘性率、η0:溶媒の粘性率、c:溶質のモル濃度
                        A:イオン間の静電的相互作用に関する量で常にA>0
B係数はイオンの大きさ、イオンと溶媒との相互作用に関する量であり、イオンの水和構造の形成・破壊の尺度とみなされている。ここで、イオンによる溶媒の構造形成・破壊という概念が生じる。
 一般にB係数の値により、次のように区別される。

 ・B>0のとき、構造形成性イオン (Structure Maker)
 ・B<0のとき、構造破壊性イオン (Structure Breaker)

 負の値を持つB係数は水のような構造性の高い溶媒中で見られる。このことは、水に溶質を加えることにより、、その溶液の粘性率が下がることを意味し、溶質により水の水素結合からなる三次元的な液体の構造が破壊されているためであると考えられる。
 JonesーDole B係数の正、負に対応するイオンの水和構造について、定性的には以下の水和モデルにより説明される。


Hydration model A:Structure making sphere, B:Structure breaking sphere, C: Bulk water


【関連する論文】
・Effect of Pressure, Temperature, and Concentration on the Viscosity of an Aqueous Solution of Sodium Chloride
 (J. Phys. Chem., 96, 5526-5529 (1992))
・Effect of Pressure, Temperature, and Concentration on the Viscosity of an Aqueous Solution of Ammonium Bromide Solution
 (Z. fur Naturfor., 50a, 316-322 (1995))
・Viscosity B Coefficients for Aqueous Solutions of Tetraalkylaamonium Bromide under High Pressure
 (Mat. Sci. Res. Intl., 1, 126-131 (1995))




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