研究室概要

知能情報研究室は電気情報学群情報工学科に属し、「複雑系」と「マルチエージェント」をキーワードに人工知能の研究に取り組んでいる。知能を問題解決能力や学習能力と捉えるならば、個人が持つ「個人知」だけではなく、人と人との相互作用の中から生まれる「組織知」や「社会知」といった集団レベルの知能をも考えることができる。当研究室では、このメタレベルにおける知を中心的なテーマとしている。

研究室のメンバーは生天目章 教授、佐藤浩 助教授、をはじめ、博士後期課程1名、博士前期課程2年生2名、博士前期課程1年生2名、本科4学年4名の計12名から構成される(平成18年4月現在)。

研究室が運営に関わった国際会議
研究内容

今日、既存の学問分野を横断的に連結するものとして、複雑系という研究分野が注目されている。複雑系とは、多数の自律した要素からなり、要素間の相互作用の結果、要素の総和以上の振る舞いを全体として生み出す系である。この意味で、たとえば我々の脳における神経回路網の相互作用の結果として生じる知能は複雑系であり、また、知能を持った人間が集まって作る集団組織社会も複雑系であるといえる。

複雑系において、システム内の要素が個々に自律した行動をとるとき、それらはエージェントと呼ばれる。本研究室では、多数のエージェントからなる系であるマルチエージェントシステムを対象とし、エージェント間の相互作用に関する研究を行っている。以下に代表的な研究内容を紹介する。

(1) ゲーム理論をベースとした相互作用の解析
ゲーム理論とは、複数の人間が関わる意思決定の問題を数学的に記述して分析する手法である。相手の出方を考えながら自分の行動を決定するという戦略的状況は、チェスや将棋といったボードゲームに限らず人間の活動全般に見られるものであり、その応用分野は多岐に渡る。ゲームにおいて各エージェントの獲得する利得は、それぞれの戦略の組み合わせによって決まる。お互いの利益が複雑に絡み合う中で、いかにすれば自らの利益を確保できるか、そのためにはエージェントはどのような意思決定をすべきかを、ゲーム理論では均衡解という概念を通じて明らかにすることができる。
本研究室では、H. A.サイモンの提唱する限定合理性の概念を導入したエージェント集団がどのような挙動を示すかについて、従来のゲーム理論を拡張した社会ゲームや集団ゲームを対象として研究を行っている。限定合理性とは「合理的であろうと意図しているけれども限定的にしか合理的たりえない」ということを意味する。現実の社会活動においては、意思決定者の情報収集能力や情報処理能力を超えた判断を要求される場面が多く、そのような状況下ではたとえ最善ではなくとも結論を出さねばならない。また、些細な事柄に関する問題においては、習慣や感情にしたがって行動してしまうことも多い。完全合理性の元では個人は均質でしか在り得ないが、この条件を緩和することにより、個々の嗜好や個性を導入することや、学習によって新しい行動ルールを獲得することが可能となる。
具体例として、分権的組織におけるノイズの効果に関する研究があげられる。この研究は、会社や軍隊といった中央集権的な組織にとってはノイズが意思決定を妨げるものでしかないのに対し、組織の形態を分権的にすることでノイズに対し頑健になるだけでなく、場合によってはノイズの存在が全体の挙動の改善にさえつながる、ということを示したものである。また、この他にも市場メカニズムを取り入れた計算モデルに関する研究、譲り合い学習に関する研究、Two Sided Matching Mechanismでの効率的なマッチングアルゴリズムの開発などに取り組んでいる。
(2)エージェントベースシミュレーションによる社会システムの解析
要素の数が中程度である系においては、ごく少数の要素に対して用いられるような解析的な手法も、また莫大な要素数に対して有効である統計的な手法を使うこともできない。このような状況においてはコンピュータによるシミュレーションが唯一の解法として考えられる。そこでは、さまざまな社会現象を行動主体としてのエージェントに着目してモデリングし、シミュレーションによりその検証を行うことで研究を進めていくという方法がとられる。
具体例としては、京大、東工大、筑波大、徳島大、大阪市立大、近畿大等との共同プロジェクトである U-Mart 人工市場プロジェクト(http://www.u-mart.econ.kyoto-u.ac.jp) への参画があげられる。人間とコンピュータエージェントが作り出す市場の複雑な挙動から多くの知見を得ている。また、この他にも実験経済学的手法とエージェントベースシミュレーションの融合などにも取り組んでいる。こちらも詳細については研究室のWebページを参照いただきたい。
複雑なネットワークの研究
複雑なネットワークの科学とは,社会ネットワーク分析などの分野では古くから注目されていたネットワークが,計算機の向上によって従来は困難であった大規模なネットワーク上での現象の分析が現実的に可能となったことなどを起因として,計算機科学の分野でも様々な研究が行なわれるようになった.複雑なネットワークの分野では,様々な系がもつ構造(ネットワーク)に着目し,そのネットワークから創発される現象の分析や,ネットワークが形成される過程の解明が試みられている.これまで,系の上での現象は個々の要素間での相互作用が注目されていたが,ネットワークの科学では,相互作用がどのような構造であるのかで,系の上で行なわれる現象に違いが生まれるのではないかと考えられている.
本研究室では,それらを踏まえてネットワークの視点から,分散DoS や大規模カスケード現象の原因やその対策の解明を試みている.
研究室活動

本研究室では、国際的な学会やワークショップなどの運営に積極的に関わっている。ここ数年においては、

  • 4th International Conference on Computational Intelligence and Multimedia Applications (ICCIMA01, 2001)
  • 6th International Conference on Complex Systems(CS02,2002)
  • 1st International Workshop on Agent-Based Approaches in Economics and Social Complex Systems (AESCS 2001, 2001)
  • 9th Workshop on Economics and Heterogeneous Interacting Agents (WEHIA04)
の開催をしている。

国際会議の運営は海外の研究機関と密接な関係を築くことができ、さらには共同研究の開始に繋がるなどプラスの面が大きい。本研究室に所属する学生にも積極的に発表の機会を与えている。インターネットの普及により世界は狭くなったといえるが、外国の研究者と面と向かって話す機会はそれでもまだ少ない。ぜひこのような機会を生かして欲しい。

2007.5.9-11, Brest, France
  • MASH 2007:Computational Methods for Modelling and leArning in Social and Human Sciences
  • http://conferences.enst-bretagne.fr/mashs-2007
  • Invited Speaker [生天目]
2007.6.16-19, Faifax, USA
  • ESHIA 2007:Economic Sicence with Heterogeneous Agents
  • http://conferences.enst-bretagne.fr/mashs-2007
  • 発表 [生天目]
2007.7.2-5, Gold coast, Australia  
  • Complex Systems 2007
  • 発表予定 [レウ,小松]
  • Invited Speaker [生天目]
2007.8.17-19 ,東京 台場  
  • 第3回 ネットワークが創発する知能研究会 (SIG-KBS)
  • 投稿予定 [青柳]
2007.8.29-30 ,Waseda University, Tokyo, Japan
  • The Fifth International Workshop on Agent-based Approaches in Economic and Social Complex Systems
  • http://www.paaa.econ.kyoto-u.ac.jp/AESCS2007/
  • 投稿予定 [佐藤,青柳]
2007.9.1-4 ,富士山研修センター
  • 第3回 ネットワーク生態学夏合宿 研究会(SIG-KBS)
  • 投稿予定 [小山.松山,シン]
2007.9.17-22, La Londe les Maures,France
  • Summer School on Agent-based model for Spacial Systems
  • http://perso.univ-rennes1.fr/denis.phan/laLonde/
  • Invited Lectureer [生天目]
2007.9.25-26 ,Shanghai,China
  • The First International Conference on Risk Analysis and Crisis Response
  • 投稿予定 [レウ]
2007.10.1-5, Dresden
  • European Complex Systems Society : ECCS'07
  • Workshop on Heterogeneous Agent Systems and Complex Networks
  • 投稿予定 [青柳]
2007.10.25-27 , 九州大学
  • JAWS2006
  • 発表予定者:[青柳,小松,レウ]
2007.11.30-12.1 , 防衛大
  • IES 2007
  • Final (camera-ready) paper due: November 15, 2007
  • 投稿予定 [全員]

(文責:生天目、佐藤)