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応用分析化学 国内学会等 海外学会等 NIST留学記 NDA留学記

【報告-第2回】 1999年9月5日掲載 

~ 夏休みはなかった! ~

- 公務員の「夏期特別研修」 -
9月に入り暦の上では秋になりましたが、夏の暑さはまだまだ衰えません。
防衛大学校は8月末まで「夏季特別研修期間」で、学校の授業は1カ月半にわたりお休みでした。
普通の大学や大学院なら夏休みと呼ぶところですが、ここで学ぶ学生は国から給料をもらって働く
特別国家公務員ですから、そうは呼びません。
授業がない代わりに、自主的な研究活動を続ける夏の研修期間というわけです。 

この間の大学構内は、主役の本科(大学)生の大半が帰省して閑散としています。
まぶしい白の制服姿に代わって、校内をたまに歩いている学生はTシャツと短パン姿。
あちこちに「軽装期間中」と張り出しがあって、先生たちもノーネクタイというラフな姿が目立ちます。

校内はのんびりしていますが、防衛庁の教育機関である防大の総合安全保障研究科は、
さすがに第一線の幹部自衛官や事務官が教えてくれるところです。
普通の学校のようには自由に夏休みを楽しませてもらえません。
どの教授からも、山ほどの宿題が出されました。
ちなみに私が出された宿題は全部で小論文が5本プラス大量の英文講読の予習。
そのいくつかをご紹介すると……。



研究科で使う教科書や参考書

●『戦争はなぜ起きるのか。世界から戦争をなくすことは可能か。 戦争を減らして、より平和な世界を実現するために人間は何ができるか。 国際政治学の諸学派のうち少なくとも3つ以上選び、 それぞれの学派の立場から上記の問いに答え、批判を加えよ。 その上で諸君自身の回答を述べよ』(国際秩序論) ●『共通利益があるが協力が達成されていない2国間、多国間の安全保障、経済などについて、 なぜ協力がうまくいかないのかを、 ネオ・リベラリズムまたはネオ・リアリズムの観点から分析せよ』 (国際協力論) 宿題の内容が難しすぎて、「『留学』記」を執筆中の現在も まだ終えていないものがいくつもあり、提出期限を前に頭を抱えています。 - 米軍部隊が続々、日本に - さて、静かな防大とは対照的に、日本を取り巻く現実の防衛問題は、 7、8月と北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)の中距離弾道弾テポドン 再発射をめぐってあわただしく動きました。 日本を揺るがした昨年8月31日の抜き打ち的なテポドン発射からちょうど1年になります。 報道機関や軍事専門家などが注目したのは、日米政府高官の発言とともに、 再発射の動きをとらえようとする米軍の部隊配備状況でした。 横須賀や佐世保には、弾道ミサイル観測船・オブザベーション・アイランド やインビンシブルという米海軍の虎の子が集結し、沖縄の嘉手納基地には、 湾岸戦争で投入された夜間爆撃能力を備えるF15Eストライクイーグルが前進配備されました。 また沖縄のホワイトビーチには特殊作戦用の原子力潜水艦・カメハメハが、 佐世保には弾道弾迎撃用のミサイルを最初に搭載する予定といわれる イージス巡洋艦・レイクエリーもそれぞれ入港しました。 在日米軍基地に続々と集まる米軍部隊の動きをもとに、 新聞やテレビは「再発射間近か」という観測を次々と打ち出しました。 再発射は、日米韓さらに中国、ロシアを交えた協議の結果、 国際的な包囲網によって押さえ込まれている印象を与えていますが、緊張はまだしばらく続きそうです。 中国と台湾との関係も、李登輝総統の「特殊な国と国の関係」発言をきっかに摩擦が高まりつつあります。 国際政治学の視点で国際紛争問題を研究するする関係者にとっても、目が離せない夏でした。 - 活気あふれる北京 [研究準備で中国訪問] - ところで、夏季研修期間は研究科の学生にとって、将来の修士論文の準備に取り組む貴重な時間でもあります。 1年先輩にあたる2期生の方々は、連日、防大の図書館や各地の図書館・資料館に通いづめで 資料収集に奔走しています。 米国や欧州を研究する学生たちは、はるばる現地の公文書館や研究機関にまで出かけます。 同期生のなかにも西欧や台湾、米国を旅行してきた人たちがいます。 本格的な論文執筆までにまだ余裕はあるものの、東アジアまたは日米同盟をテーマにしたいと考えている私は、 ここを知らずに語れない中国を7月末に訪ねました。といっても、北京3泊4日の駆け足旅行ですが。 万里の長城の前に立つ筆者

ちょうど建国50周年を祝う今年10月1日の記念式典の準備の真っ最中で、 市内は大規模な建物の建設ラッシュ。 天安門など主要な建物でも化粧直しや修理作業が急ピッチで進められていました。 市民生活は質素でまだ人民服を着た人々が多く、町中は自転車で埋め尽くされていて…… と勝手に思いこんでいたら、北京は東京と大差のない大都会でした。 市内は自動車やトラックであふれ、朝夕は身動きのできないほどのすごい渋滞です。 高層ビルがあちこちに林立し、ディスコでは若者たちが欧米の流行曲にあわせて踊っています。 レストランで外食する裕福な家族も大勢見られ、 天安門前広場は夜遅くまで地方からの観光客でにぎわっていました。 香港か台湾に来ているような錯覚に何度とらわれたでしょう。 毛沢東の死後の中国の「改革・開放」政策は、もちろん活字を通しては知っていましたが、 ここまで急速に成長を遂げていたとは驚きでした。 こうした国力の急伸を背景に、中国が軍備拡大に走って東アジアの覇権をめざすのではないか、 という危惧を抱く西側諸国の人々がいてもおかしくないな、とうなずける部分も確かにありました。 - どんな教科書を使っているか - 総合安全保障といっても他の大学院の国際関係研究科などと共通した講座が多いので、 最後に、ご興味のある方のために、私たちがどんな本を教材や参考文献に利用しているかをご紹介します。 防衛大学校安全保障学研究会編 『安全保障学入門』(亜紀書房) ゴードン・A・クレイグら 『軍事力と外交』(有斐閣) ポール・R・ビオテイら 『国際関係第二版』(彩流社) 原彬久 『国際関係学講義』(有斐閣) 石井貫太郎 『現代国際政治理論』(ミネルヴァ書房) 岡部達味 『国際政治の分析枠組』(東京大学出版会) J・フランケル 『国際関係論』(東京大学出版会) 猪口邦子 『戦争と平和』(東京大学出版会) 山本吉宣 『国際的相互依存』(東京大学出版会) 高坂正尭 『国際政治--恐怖と希望』(中公新書) 加藤秀治郎ら 『国際政治の基礎知識』(芦書房) 高坂正尭・公文俊平 『国際政治経済の基礎知識』(有斐閣) 夏季研修中には こうした堅い専門書だけでなく、柔らかい本も何冊か読みました。 意外におもしろかったのは、クリントン政権で国防次官補をつとめ、 日米安保再定義につながる東アジア戦略報告をまとめた 国際政治学者ジョセフ・ナイ氏(現・ハーバード大学ケネデイスクール学長)が書いた小説 『ダーテイー・ハンズ』(都市出版)です。
Q and A
さて、前回の問題の答えです。
 「集団安全保障」とは、国際社会に国際機構を作って、対立関係にある国も含めた多数の諸国が協力しあって
 安全を維持しようとする考え方のことです。
 敵も味方もひっくるめて協同して互いの安全の面倒をみようという発想で、
 代表的なモデルとしては国際連盟や国際連合があります。

 これに対し、「集団防衛」は複数国家による共同防衛の考え方です。
 利害や価値観を共有する国が同盟を組んで共通の敵にあたるという発想で、
 冷戦時代のNATOやワルシャワ条約機構などがあります。
 しかし、冷戦後、NATOはソ連という敵を失い、集団防衛は中核機能として残してはいるものの、
 バルカン地域で展開した軍事的対応したように全体としてその役割は大きく変質してきています。
 
今回の問題は、「テロ」と「ゲリラ」の違いです。
日本では特にマスコミを中心に両者の意味が混同して用いられるケースが目立ちます。
たとえば、「極左グループによるゲリラ」という表現法は、戦争法の厳密な定義からすると間違った表現です。

さて、どんな違いがあるのでしょうか……。 
答えは次回です。 
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