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応用分析化学 国内学会等 海外学会等 NIST留学記 NDA留学記

【報告-第4回】 1999年11月15日掲載 

~ 試験の後はお祭りだ ~

- 授業を「逆採点」 -
浦賀水道を見下ろす小原台(おばらだい)に  秋風が吹き始める10月。防衛大学校は
本科(学部)・研究科(大学院)ともに試験の季節を迎え、学内はしばし緊張感に包まれます。



校舎から横須賀湾を望む。
遠くに富士山

防大での教科の評価は、他大学と同じ優良可の3段階評価です。 同級の自衛官の人たちにとっては、 ここでの成績が将来の昇進の判断材料になることもあるそうで、 ひときわ真剣です。 私にとっても大学卒業以来ひさしぶりの本格的な試験勉強となりました。 前期授業はこれをもって終了しました。半年間お世話になった感謝の気持ちを込めて、 私が履修した授業のいくつかを「逆採点」してみたいと思います。 政軍関係論(戸部良一教授、河野仁助教授)…… 政治による軍の統制の仕方の違いを各国別に学びました。 重厚で格調高い(つまり予習や準備が大変な)授業でした。 国際紛争論(神谷万丈助教授)…… 国際関係で用いられる基礎概念が身につきました。 教官の博識と現実政治に理論をあてはめる巧みさに感服しました。 アメリカ安全保障研究(西脇文昭助教授)…… 曇りなき自分の目で 原文の文献にあたることの大切さを教えてもらいました。 米国の核戦略にちょっと詳しくなりました。 ヨーロッパ安全保障研究(広瀬佳一助教授)…… NATOの東方拡大というホットなテーマをじっくり勉強しました。 防大にこんな愉快な先生がいることも驚きでした。 ロシア安全保障研究(山嵜直美助教授、角田安正助教授)…… ソ連からロシアへの変革の動きを、安全保障の観点から学びました。 英文購読の厳しさを知りました。 (防大の教官に関心がおありの方は、 防大のホームページhttp://www.mod.go.jp/nda/education/researcher.htmlをご覧ください) - 開校祭はおおにぎわい - 11月13、14の両日、 小原台では学園祭にあたる開校祭(第47回)が開かれました。 体育祭、文化祭、学芸会などをあわせたような催しです。 作家安部譲二さんの講演や戦闘訓練の実演まであり、一般開放された校内は大勢の見学者でにぎわいました。 圧巻は14日の「観閲式」と「棒倒し」。 「観閲式」は、約2000人の本科生が濃紺の制服に身を包み、サーベルや小銃を掲げ 音楽隊の演奏にあわせて行進。一糸乱れぬ姿に、ギャラリーからは感嘆の声が。 名物「棒倒し」(防衛大学校提供)

旧海軍兵学校の伝統を継承する「棒倒し」は、 4つの大隊(約500人)から選抜された150人ずつのチームが 「死闘」を繰り広げました。制限時間2分。相手の棒を30度以上傾ければ勝ち。 ルールは簡単ながら、複雑な戦術で相手をかく乱したり出し抜いたりして攻め落とす組織戦です。 選手たちはラグビー選手のようなギアをかぶって裸足、素手で登場。 勇ましい前口上のあと、閧(とき)の声をあげてぶつかり合います。 攻撃(突攻、スクラム、遊撃)、防御(棒持ち、サークル、上のり、キラー) とも細かく役割が分かれていて、まさに「激突」でありました。 グラウンド風景

本業の学問は、後期授業に入りました。 私が所属する総合安全保障研究科は、前期の基礎編に続いて応用編です。 今回選んだのは、軍備管理・軍縮論、戦争法、集団安全保障機構論、 国際連合論、比較防衛政策、防衛関連民事法、戦争史の7科目。 英文の必読文献が配布され、その厚みにため息を漏らしています。 1週間の英文講読量は200ページ近くに達するでしょうか。詳しくは次回に。 - 士官教育の日米比較・・金井教務部長に聞く - 防大は自衛隊の幹部(士官)候補生を養成する機関です。 ここで修士を取得する人々は毎年、理工学研究科から約60人、総合安全保障研究科から約20人。 自衛隊からはこのほか年平均7人の博士取得者を出しているそうです。 こうした水準は諸外国と比べるとどうなのでしょう。ドイツやカナダで教鞭をとった経験をお持ちで、 米国事情に詳しい金井喜美雄教務部長(航空宇宙工学)にお話をうかがいました。 金井喜美雄教務部長(現 副校長)

「米軍は非常に高学位志向の軍隊です。 今年3月、合衆国海軍大学院(モントレー)と米空軍工科大学(デイトン)を見てきました。 海軍大学院は68カ国から3200人の留学生を受け入れた実績をもち、 人材教育を通して他国との協力関係を築いています。 米軍では空軍士官学校卒業後の10年で、士官の75%が修士を取得しています。 修士取得者の比率は、航空自衛隊が4・4%なのに対し、米軍は34・3%で、かなり開きがあります。 米国では軍の学校で高い学位がとれるため、質の高い若者を引きつける魅力となっています。 最新技術を扱う軍の世界では、士官が高い知識と技能を身につけることが何より大切です。 平時の自衛隊でも教育の役割は同じように大きいと思います」
Q and A
前回の答えです。
 「文民統制」(シビリアン・コントロール)は、一般に軍に対する政治の優位を指し示す言葉で、
 政治が軍をしっかりと統制することによって軍の政治介入を防ぐという原則のことを言います。
 戦前の日本には「統帥権の確立」という原則がありましたが、
 「文民統制の原則」が再軍備過程で米国によって持ち込まれました。

 一方、「文官統制」は、戦後できた防衛庁・自衛隊内の防衛官僚(文官)と
 制服幹部(武官)の間の特殊な関係を指す言葉です。
 防衛政策の立案などをめぐり、文官が武官を従属させることによって武官の暴走を食い止めるという
「文官優位」の発想が根底にあるとされています。
 両者の摩擦が表面化することはあまりありませんが、
 防衛官僚と幹部自衛官の対立の火種になることが時々あります。 
  
今回の問題は、国際関係学の基礎的な概念に関するものです。
国際政治の世界でいう「リアリズム」と「リベラリズム」には、どういった違いがあるでしょう。
それぞれを代表する学者や政治家にはどんな人がいるでしょう。 
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