疎水性水和の起源

　テトラアルキルアンモニウム塩(R₄NX (R=Met, Et, n-Pr, and n-Bu; X = アニオン)は、その構造性から疎水性水和、疎水性相互作用のモデル化合物として注目されてきた。実際、R₄NX水溶液に関する部分モル体積、粘度、ガラス転移などの物理量は古くから報告されている。また、この物理量は様々な条件下で異常な挙動を示すことが知られているものの、その要因はクラスレート形成説などが提唱されているが、いまだ未解決である。
　近年、我々はEt₄NX水溶液に見られる液ー液不混合による二重ガラス転移挙動と下図に示すEt₄N+イオンのコンフォメーション変化(trans-trans. trans-trans (tt.tt)体とtrans-gauhce.trans-gauche(tg.tg)体)に相関があることを見出した。これらの結果はマクロな物理量の異常な挙動はミクロなコンフォメーション変化と相関がある可能性を示唆するものである。我々の最終目標はR₄NX水溶液のコンフォメーション平衡と溶媒和(水和)構造の観点からR₄NX水溶液の疎水性水和、疎水性相互作用の要因について明らかにすることである。

テトラエチルアンモニウムカチオンのコンフォメーション平衡
(a:trans-trans. trans-trans (tt.tt)体、b:trans-gauhce.trans-gauche(tg.tg)体)

【関連する論文】
・Drastic Change in the Conformational Equilibrium of Tetraethylammonium Bromide in the Glassy Aqueous
　Solution
　(Chem. Phys. Lett., 540, 8-11 (2006))
・Raman Spectroscopic Study on the Hydration Structures of Tetraethylammonium Cation in Water
　(J. Phys. Chem. A, 110, 10829-10833 (2006))
・Raman Study on the Hydration Structures of Tetraethylammonium Chloride in Water
　(J. Phys.:Conf. Ser., 121, 042005 (pp.1-5) (2008))
・Raman Spectroscopic Study on the Amorphous State of Aqueous Tetralkylammonium Salt Solution
　(Physics and Chemistry of Ice 2010, 437-440 (2011))

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