研究成果

 

論文題目:海岸漂着ゴミの実態に関する調査研究

 

漂着ゴミ問題は、海浜景観に関することだけでなく、海浜地盤汚染や海岸・海洋生物への有害物質による汚染という点においても重要な環境問題を含んでいる。漂着ゴミは海流によって漂着の方向性を決めていると思われることから、日本海沿岸へのほとんどのゴミは黒潮・対馬海流に起因して漂着している可能性が高い。本研究では近隣諸国からの漂着ゴミに注目し、日本列島での漂着ゴミ調査を実施し、詳細な分析・評価を試みた。漂着ゴミの定量的評価については、海岸域でのゴミの個数を数える個数評価によって実施している。漂着ゴミの対象は流木や海藻類は除いた人工物質とし、それらをプラスチック類・ビン類・缶類・漁具類に大別している。さらに漂着ゴミは国籍別に区分し、日本製・外国製・不明ゴミに分けた。外国製ゴミは中国、台湾、韓国、ロシアと、それ以外のその他(英字等)の5種類に細区分した。日本の漂着ゴミはこれら近海の海流と密接に関連していると思われ、近隣諸国からの外国製ゴミの漂着度合には海岸域的特徴が見出されている。本研究では、黒潮ルート沿いの南西諸島、特に琉球諸島では外国製ゴミが日本製ゴミの約26倍を占めておりその外国製ゴミの主体が中国・台湾製ゴミであること、対馬海流ルート沿い九州〜東北南部の日本海側の海岸では数量的に外国製ゴミが日本製ゴミを圧倒していて特に外国製ゴミの79割を韓国製ゴミが占めていること、対馬海流が分岐して流れ込む津軽海峡沿岸域では外国製ゴミと日本製ゴミの比率がほぼ等しく太平洋沿岸域まで回り込んで漂着していること、北海道オホーツク海沿岸域では韓国製ゴミに加えロシア製ゴミが外国製ゴミに3割程度混在していること、太平洋側の海岸域での漂着ゴミは日本製ゴミが9割以上を占めていることなどの実態を明らかにしている。漂着ゴミは遠距離に亘り海流に乗って運搬されて漂着するゴミと、不当・不適切に処理されて日本の陸域や海岸域近傍から流出・排出して漂着するゴミに大別される。そのため漂着ゴミの国籍・種類などの構成・タイプには海岸域的特徴がある。漂着ゴミによる海岸汚染問題に対する防止・処理対策を確立するためには漂着ゴミの緻密な分析調査を全国的に展開することの重要性を指摘している。