電子情報工学研究テーマ(その3)

圧電トランスインバータによる液晶バックライトの制御

圧電トランスインバータによるCCFL点灯例

  近年、映像、情報機器用の表示装置は大型化される一方で、軽量、薄型化が求められている。特にノ−トパソコンなどの携帯機器では軽量、薄型化と低消費電力化が要求される。今後ますます発展すると考えられる携帯用情報表示機器が可能となったのは、液晶表示装置の実用化によるものであるが、当初の小型モノクロ用から、最近では10インチ以上のカラ−液晶表示装置が実用にされるまでに発展してきている(1)。ところで、液晶はそれ自体では発光しないので、表示装置には液晶板とそのドライブ回路の他にバックライト装置が必要であり、液晶ドライブに必要な電力よりバックライト用に必要な電力が大きいことが低電力化の障害となっている。
 バックライト装置は光源、駆動回路および導光板で構成される。光源には小型、低消費電力および長寿命などの特性から冷陰極管(CCFL)が多用される。また冷陰極管は線光源であり、面光源に変換するために導光板が用いられるが、均一な面光源を得るための研究はかなり進んでいる(1)。
 CCFLは点灯するまでは絶縁物であり、その点灯には 1000 V 以上の高電圧が必要である一方、点灯後の内部抵抗は 100kΩ程度となり、駆動電圧も数 100Vとなる。また管の輝度特性および寿命特性から、共振回路を用いた数 10kHzの正弦波交流で駆動するのが普通であり、この回路はインバ−タ(2) と呼ばれている。
 従来のインバ−タでは高圧発生には巻き線トランスが用いられてきたが、絶縁特性の条件と駆動回路の薄型化の両者を満足させるのは困難であった。また、調光用の制御回路も別に必要であった。 一方、一時期、非巻き線型の高電圧発生器として研究された圧電トランスは(3),(4)、数10MΩ以上の高抵抗負荷では 300倍以上の昇圧比が容易に得られる一方、100 kΩ程度の負荷に対しては10倍程度の昇圧比が得られるにすぎず、また出力電力も小さいことなどが問題であった。ところで、これらの特性は負荷をCCFLと考えると負荷の要求特性に良く一致している。 当研究室では先に、圧電トランスの駆動周波数を制御して直流高電圧制御を行う方法(5)、およびCCFL用インバ−タに応用する場合の原理を提案したが(6)、広い入力電圧範囲と調光範囲、高効率および薄型化の可能性などCCFL用インバ−タとして実用に耐え得る特性を得た。

 

文献
(1) 電子技術,1994-6,pp.5-83:日刊工業新聞社
(2) 液晶パネル用バックライト技術:トリケップス
(3) C.A.Rosen:Proc.Electronic Comp.Symp.,pp.205-211(1956)
(4) 要他:日本音響会誌,32-8,pp.470-479(1976)
(5) 萩原他:昭和60年電気学会全国大会 No.454
(6) 萩原 :平成5年電気学会全国大会 No.570

   電子情報工学  ホ−ムページへ戻る

   電子工学科   電気工学教室   防 大  ホ−ムページへ戻る

最終更新日 : 1997/08/14