UIC留学記 〜第2回 T.A.K Group!〜
私の留学先であるイリノイ大学シカゴ校化学科のTimothy A. Keiderling Groupは、ペプチドやタンパク質の構造安定性に関する熱力学的解析及び速度論解析をFTIR、CD、VCD、Raman、蛍光、UV-Visなどの様々な分光法及び分子動力学法、DFT計算を用いて行っております。研究室のボスであるProf.Timothy
A. Keiderlingは、Vibrational circular dichroism(VCD)の世界的権威であり、これまで200報近くの論文を執筆しています。
最近のGroupの研究内容としては、
(1)β-Hairpinペプチドの構造安定性における置換基効果
(2)VCD法の技術開発
(3)有機溶媒中の3
10-Helix構造の形成機構
(4)ミセル中のタンパク質の挙動
を中心に行っています。
ここで私の研究内容について少し触れたいと思います。私の研究テーマは(1)のβ-Hairpinペプチドの構造安定性における置換基効果に関する研究に従事しております。私の使用しているβ-Hairpinペプチドは、Trytophan
Zipper ペプチド1(Trpzip1)と呼ばれる12残基のアミノ酸(SWTWEGNKWTWK)から構成されるペプチドで、タンパク質中に見られる逆平行β-Sheetのモデルペプチドです。このTrpzipペプチドは、A.
G. Cochranらによって2002年に合成されたβ-Hairpinペプチドで(PNAS, 98, 5578 (2001))、特徴としては4つのTrp残基が疎水性相互作用を形成し、Hairpin構造を安定化させることです。また、このTrpzipにはいつかの種類があるのですが、とりわけTrpzip1と2は、Turn部分のアミノ酸配列が入れ替わるだけで(EGNK
TZ1、ENGK TZ2)でHairpin unfoldに対するTmが約20度以上も異なるという非常に興味深いペプチドです。私はこのTrpzip1のTrp残基で構成される疎水性相互作用と二次構造の関係を調べるために、Trp→Tyrへの置換を行った6種類のペプチドに対して、FTIR、CD、Raman分光法を用いた研究を行っています。
私が普段使っている部屋は、インド人とパキスタン人の大学院生と共同部屋を使わせていただいています。
共同部屋と実験室