2009年8月から12月の間、私は米海軍士官学校(United States Naval Academy; 以下USNA)で1セメスター勉強する機会を得ました。日本における大学教育とは異なる部分が多かったので、学生の立場から、その特徴を述べたいと思います。
○ 細切れ授業
まず、制度的な違いについてです。
授業は全て45分。その分、同じ科目の授業が週に2,3回ありました。これにより、日本での授業に比べて各授業に対する集中力が持続させやすいうえ、次の授業までのスパンが短いので、理解の定着にも役立っていると思いました。表1は現地での日課時限、表2は私が実際に受講した授業の時間割です。(表2中にあるEIとはExtra Instructionの略で、授業のない時間に学生が個人的に教官をたずね、授業内容の理解を深めるというものです。)
「細切れのほうが集中力が持続する」という事実は一考する価値があり、防衛大学校においても改善すべき余地があると思います。改善策として、たとえば1番簡単なのは、授業の中で休憩時間を設けてもらうことです。90分授業の中で、まず40分はきっちり聞かせる。「普段の生活が忙しい」が売りの防大生でも、授業が始まってすぐの居眠りは正当化できません。最初の40分は何が何でもしっかり聞かせる。そして最も大事なのは、その後10分間の休憩を入れていただきたい。この際注意しなければならないのは、効果の薄い休憩時間にしないということです。「休憩時間」というよりは、「睡眠時間」として学生に与えたほうがいいと思います。そしてすっきりした頭で、残り40分の授業に臨ませる。それにより90分という長い時間でも効率よく集中力を持続させることができるのではないでしょうか。
○大量の課題
USNAにおいては、毎回の授業で必ず大量の課題が出されました。主にレポート課題と教科書の予習でした。レポートでは質・量ともに自分ひとりで解くことができないような課題が出され、予習課題についても到底まともには消化できないものでした。しかし、レポート課題の期限に関しては(防衛学系科目を除き)寛容であったため、時間をかけて理解しながら課題に取り組むことができました。しかし提出しなければ大きく減点されるため、学生は積極的に教官にアポをとって聞きに行くのが一般的でした。予習課題についても「概要さえつかめればそれでいい」という程度のもので、学生側も律儀に「予習しろといわれたからやる」のではなく、「授業中の議論についていくために予習する」という感覚でした。
○シラバスの徹底
USNAでは、特に防衛学系の授業でシラバスと実際の授業展開が明確に一致しており、学生としても予習がしやすかったです。専門科目に関しては学生の理解がついていかず、シラバスよりも遅れた授業展開となっていました。このあたりの事情については防大とあまり変わらないように感じました。
○学生の理解を確認、わからなければEIを設定
USNAでの授業は「学生の理解が前提」という意識が強かったです。常に学生との対話が重視され、学生としては息苦しい授業でしたが、その分、毎回の授業で着実に知識を増やしていけたと思います。またそれでもついていけない場合にはEI、すなわち学生が空き時間に教官のところへ聞きに行くという姿勢が防大よりも学生に浸透していました。特徴的だったのは、EIの設定を教官側から積極的に提示し、学生もそれに対して嫌がることもせず、素直に従っていました。ただしこれに関しては防大よりもUSNAでは自由な時間が多かったということも大きな要因ではあると思います。
○ テスト前は公式テスト対策
ほとんどの科目において、テスト前夜の自習時間にテスト対策授業が開講されていました。これは学生にとって点数に直結する授業であり、大きく役に立つものでした。もちろん、「普段授業を聞いていなくてもこれさえ聞けば単位がとれる」という類のものではありませんが、テスト対策の負担が軽減されて、学生としてはうれしかったです。
○最後に
USNAと防大では、そもそも大学教育制度が違ううえ、学校における勉学の位置づけ、学生の意識や教官の数なども違い、単純に比較することはできません。しかし私はUSNAでの勉学生活を通じて、USNAでは「ある程度高い水準を要求はされるが、それに対する合理的な教育と、フォローがなされている」と感じました。学生が勉強により集中できるような環境づくりを、防大の教官の方々にお願いしたいと思います。4学年として、学生自身の問題は解決に向けて私たちががんばっていきたいと思います。