査読論文の刊行

2024年(令和6年)3月

書評タイトル クリストファー・ブラッドマン著(神月謙一訳)『戦争と交渉の経済学ーー人はなぜ戦うのか』(草思社、2023年、       456項)

掲載誌 『防衛学研究』第70号

筆者  統率・戦史教育室 准教授 小島 雅之 2等陸佐

本書評は、2022年に米国のヴァイキング社(Viking Press)から出版された原書Why We Fight: The Roots of War and the Paths to Peace の邦訳版について評したものである。
本書の最大の特徴は、これまで多くの研究者によって提示されてきた戦争の発生に関する諸理論を、集団を平和から戦争へと傾ける5つの要因として類型化するという野心的なプロジェクトに挑んだ点にある。また、類型化に当たっては、戦争による紛争の解決は交渉によって平和的に解決する場合に比べて期待利得が少ないため戦略的に行動する集団は戦争を回避しようとするという、ゲーム理論の考え方を基にして議論を進めているが、平易な表現を使って説明しているため、ゲーム理論を知らない初学者でも容易に理解できるようになっている。このため、戦争や平和について学ぶ際の入門書として好適な一冊である。
本書評では、まず本書の内容についてその概要を紹介した後、本書の意義と課題、特に戦争発生原因の類型論として見た場合の課題について評した。

 

2024年03月31日