査読論文の刊行

2024年(令和6年)3月

論文のタイトル SNSは権威主義に対する支持を高めるのか ー権威主義的パーソナリティー研究から考えるー

掲載誌 『防衛学研究』第70号

統率・戦史教育室 准教授 寺田 孝史 3等陸佐

 近年、民主主義の後退、政治の権威主義化に注目が集まっている。この動向に関して、権威主義的なリーダーや政党、そして権威主義体制を支持する者の心理については「権威主義的パーソナリティ」という概念がある。他方、デジタル技術、特にSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)が人間心理に及ぼす影響についての心理学的研究も進んでいるが、権威主義的パーソナリティとSNSとの関連性を扱った研究は限定的である。
そこで、本稿では、「SNSは権威主義に対する支持を高めるのか」を問いとし、権威主義的パーソナリティ概念の整理を行った上で、SNSが権威主義の支持にどのように影響を及ぼすのかを明らかにすることとした。そして、SNSのアルゴリズムが、フィルターバブル、エコーチェンバーという現象を生み出す結果、閲覧する人々の感情や思考を特定の方向に誘導する確証バイアスを生起させるというメカニズムが権威主義を支持する過程に影響を与えることを示した。
最後に、限られた条件下であるもののSNSが権威主義化に向かわない社会に対しても促進要因として果たしうる可能性について言及した。

 

2024年03月31日