査読論文の刊行
論文のタイトル 「湾岸危機に対する日本の人的貢献の政治的失敗と政策過程の質――政策決定者に
影響を及ぼす歴史の教訓と行政組織の政策機能――」
掲載誌 『防衛学研究』第5巻、第1号
筆者 統率・戦史教育室 准教授 諸永大2等陸佐

湾岸危機における米国の日本に対する要請は、冷戦後の国際秩序の維持のため、西側諸国の結束を目に見える形で示す意図によって一貫しており、この意図は日本が見出しつつあった冷戦後の外交方針と一致していた。それにも拘らず日本政府は、意図に沿わない対応に終始した。米国大統領の要請を契機として開始された要員派遣の検討と、人的貢献策の法制化を目的とした「国連平和協力法案」の策定過程は、①国益、米国の要請のいずれに対しても不適合な要員派遣の検討、②自衛隊員の参加形態を巡る政府内及び政府-与党間の亀裂の深刻化、③政府に対する強い不信感を抱く国民の増加という政治結果に終わった。
本研究は、上記の事象を政治的失敗であると捉えたうえで、政策決定者の「判断上の誘因の形成」と「選択的な環境認識」によって政策過程における合理性の程度が低下することを原因とし、検証を行った。その結果、政策決定者の認識枠組みを構成する「歴史の教訓」及び「外務省の政策機能」間の認識上の相互作用が、判断上の誘因を形成するとともに、選択的な環境認識を促すことによって政策判断が合理化され、政治的失敗を引き起こす政策過程が明らかにされた。
備 考
本件は、論文投稿時に部外意見発表手続きを実施済み。