研究発表
研究発表:「知られざる日本陸軍『第三十戦闘飛行集団』―三四三空に比肩すべき精鋭航空部隊と戦闘機超重点主義―」
発表学会:軍事史学会 令和7年度(第59回)年次大会 個人研究発表
筆者:統率・戦史教育室 准教授 福本 正樹 2等陸佐
発表内容
日本海軍の戦闘機隊には、第二次世界大戦末期に愛媛県松山市に拠点を置き、「紫電改」を操って米軍に一矢報いた精鋭部隊・第三四三海軍航空隊(三四三空)が知られていますが、実は日本陸軍航空隊にも同様の部隊が存在しました。それが四式戦闘機「疾風」約300機を揃えた「第三十戦闘飛行集団」です。
日本陸軍は、劣勢の戦局を打開するため、強力な戦闘機によって戦場上空の制空権を奪回する用兵思想「戦闘機超重点」を掲げ、これを実現すべく精鋭部隊「第三十戦闘飛行集団」を編成、昭和19年10月の比島レイテ決戦に投入します。
緒戦で一時的に制空権を奪回できた第三十戦闘飛行集団でしたが、不十分な作戦基盤や環境の制約によって消耗を重ね、最終的には稼働全機が特攻攻撃に出撃して終焉を迎えることとなります。
歴史の陰に埋もれたこの知られざる部隊の存在は、陸軍航空隊の苦闘とその限界を象徴しているのです。


備 考
本件は、学会参加に先立ち部外意見発表手続きを実施済み。