研究ノートの刊行
2025年(令和7年)12月
論文のタイトル 「海戦における付随的損害をめぐる一考察 -軍事目標に転化した商船の乗員に焦点を当てて-」
掲載誌 『戦略研究』第37号
筆者 国防論教育室 准教授 浦口 薫
刊行年月日 令和7年10月31日
論文の内容
軍事目標主義は何が軍事目標かを判断する目標選定基準なしには機能しない。海戦における目標選定基準は両次世界大戦での混乱を経て長らく不明なままであったが、1980年代以降、各国軍隊教範やサンレモ・マニュアルは、従来のカテゴリー基準に換えて次々に機能的目標選定基準を導入し、要件を満たす商船が軍事目標に転化して攻撃され得るケースが存在することまでは広範な合意が得られるようになった。
しかし、当該商船の乗員が文民としての保護を喪失するのか、保護を維持し付随的損害となるかについては見解が対立している。本論文では上記問いに関する先行研究を整理し、国家実行たる各国軍隊教範を分析し、どこまでが解明され、どこからが未解決の問題として残っているのかの確認を試みた。
分析から次の2点が明らかになった。1点目は、海戦への付随的損害概念の導入については、明確な運用方針のみならず具体的な付随的損害評価方法までを作成している米国からごく一部の簡易な言及に留まる独仏まで国による対応のレベルは様々であることが分かった。2点目は、文民の敵対行為直接参加概念の海戦への導入については各国が総じて否定的に捉えていることである。なお、若干の示唆として、本論文の分析結果が空戦法規や宇宙戦法規に及ぼす影響や日本へのインプリケーションを指摘できよう。