書評の刊行
2024年(令和6年)9月
書評タイトル 「【書評】石津 朋之、立川 京一、齋藤 達志、岩上 隆安 著『ランド・パワー原論 ―古代ギリシアから21世紀の戦争まで―』(日本経済新聞出版、2024年、448頁)
掲載誌 『防衛学研究』第71号(2024年9月)
評者 国防論教育室 准教授 浦口薫 2等海佐

本著は、ランド・パワーの体系的な説明を試みた好著です。エア・パワーやシー・パワーについて論じた著作は日本語文献も外国語文献も数多く存在しますが、ランド・パワーについての著作は、これらに比べると極めて少ない印象を受けます。まず、そのような意味で、本著には希少な価値が存在するでしょう。
本著の内容は、人間の支配や陸地の確保という海空にはない決定的な意義を有するランド・パワーの理論的な分析から、古代ギリシア・ローマ時代の戦争から現代・将来の陸上戦闘の分析も射程に入れた歴史的・実務的な分析まで、広範に及び、読者の知的好奇心を掻き立ててくれます。伝統的な機能に加えて、国内安定化等の場面でもランド・パワーの活用の場は増えており、また、ハイテク戦争とローテク戦争が混在するハイブリッド型の戦争を始め、様々な局面でランド・パワーに関する議論の重要性が増しています。これらの課題に正面から取り組んでいる本著が、ランド・パワーについて議論する際に必ず参照されるべき重要な文献であることは間違いなく、この分野に関心のある研究者や実務家に是非、お勧めしたい一冊です。