コロンビアへの初の陸上自衛官講師派遣と対テロワークショップ
国防論教育室 准教授・2等陸佐 浦上 法久
コロンビアは日本と太平洋を共有する南米の地域大国であり、国際的な影響力を持つ
国の一つである。日本とコロンビアは太平洋を跨ぎ、自由や民主主義、法の支配など同
じ価値観を共有する同志国である。コロンビアは30年以上にわたり、複数の反政府武
装組織と内戦を繰り広げてきた歴史を持つ。特に、2022年に左派政権が発足して以降、
政府は反政府組織との和解を進める取り組みを進めているが、実際には効果的な進展が
見られていない。これにより、国内の治安状況は依然として厳しく、コロンビア政府が
実効支配しているのは国土の4分の3の範囲である。テロ行為は活発であり、治安当局
との対立が続いている。コロンビアは1個師団規模の特殊部隊を有する。国際協力機構
(JICA)は、地雷除去支援を行っており、国際社会との連携が重要な要素となってい
る。さらに、コロンビア政府は中国の「一帯一路」に対して支持を表明していないこと
も注目すべき点である。
令和6(2024)年7月22日から26日まで、コロンビア国防省国際局が主催する「対
テロワークショップ」に、防衛大学校グローバルセキュリティセンター兼防衛学教育学
群准教授、浦上法久2等陸佐(博士)が講師として派遣された。これは陸上自衛官がコ
ロンビアに派遣される初めての試みであり、日本とコロンビアの防衛協力の新たな一歩
を示すものである。
ワークショップでは、参加者が対テロに関する活発な意見交換を行い、コロンビアの
現状に対する理解を深める機会となった。浦上准教授は、自衛隊のアフリカでの講師派
遣による教育経験をもとに、日本のテロ対策や地下鉄サリン事件への自衛隊化学部隊の
派遣などについて講義し、参加者とのディスカッションを通じて実践的な知識を共有し
た。
ワークショップの後、浦上准教授はコロンビアの国家警察刑事捜査局(DIJIN)、赤
十字国際委員会(ICRC)、国防大学(ESG)、特殊作戦統合司令部、国連和平検証ミッ
ション(UNVMC)を訪問・視察を行った。これにより、現地の治安機関や国際機関と
の意見交換や資料収集を行い、コロンビアの安全保障状況に関するより深い理解を得る
ことができた。
今回のコロンビアへの講師派遣は、防衛省・自衛隊とコロンビア国防省との間での防
衛協力の強化を目的としており、特に対テロに関する知識の共有は、コロンビアの安定
と地域の安全保障に貢献する重要な活動である。日本とコロンビアは、自由、民主主義、
法の支配といった同じ価値観を共有する同志国として、防衛協力を通じ、さらなる関係
の深化が期待される。今後も防衛省・自衛隊は、国際的な防衛協力の一環として、さま
ざまな国との連携を強化していくことが期待される。

ワークショップの景況①

ワークショップの景況②