査読論文の刊行
2025年(令和7年)12月
論文のタイトル 「陸戦と海戦における欺まん措置の規制」
掲載誌 『海事史研究』第82号
筆者 国防論教育室 准教授 浦口 薫
刊行年月日 令和7年11月30日
論文の内容
欺まんにより敵を混乱させる奇計は合法である一方、敵の信頼を乱用する背信行為は禁止される。両者は合法か違法かという点で決定的に異なるが、欺まんにより相手をだます点では共通し、区分は必ずしも明確でない。先行研究の多くは陸戦法規に比べ海戦法規が奇計に寛容と捉えているが、伝統的海戦法規が発展した当時と現代の海戦を比較すると、欺まん灯火、船舶自動識別装置等の前者の時代には存在しなかったものが使用され、伝統的海戦法規の考え方を現代にそのまま適用できるかについて疑問がある。本論文では、現代の陸戦と海戦における欺まん措置を列挙し、両者を比較し、欺まん措置をめぐる陸戦法規と海戦法規の相違状況を考察した。
分析の結果、陸戦法規が背信行為を一般化して本質的要素を満足するか否かで判断するのに対し、海戦法規では偽装を禁止する目標を明示し、それ以外の欺まん措置は原則的に許容するアプローチをとっていることが判明した。近年、陸戦法規においてはジュネーヴ条約第1追加議定書を始め、「武力紛争法の人道化」とでもいうべき動きがみられる。海戦法規についてもサンレモ・マニュアルで同様の試みが行われたように思われたが、本論文の分析からは、欺まん措置の部分に関する陸戦法規と海戦法規の隔たりは未だに大きいといえる。