ワンダーフォーゲルとは?

「ワンダーフォーゲル」はドイツ語で"Wander Vogel"であり、日本語では「渡り鳥」のことです。
その意味は「グループを組んで山野を歩く旅行。自然に親しみ体を鍛え、情緒を深める。また、友情を深めることをモットーとする青年活動」です。私たちはこの言葉に従い、

  1. 自然に親しみ心身を鍛える
  2. 協力・団結し、友情を深める

の2つを基本的な活動目的として、日々トレーニングと実践的活動に励んでいます。

"Wander Vogel"の起源

 普仏戦争を勝利に導いたビスマルクによって誕生した統一ドイツは19世紀末急速な人口増加と工業化の波に見舞われていました。とりわけ首都ベルリンはパリやロンドンを凌ぐ勢いで市域を広げ、ワンゲル運動もそのベルリンの郊外のシュテグリッツと呼ばれる新興住宅街で始まりました。
 1886年、シュテグリッツにあるギムナジウム(日本の中・高校に当たる学校)の教師だったヘルマン・ホフマンは自分の担当する速記術教室の生徒達が詰め込み教育に窒息しそうになっているのを憂慮し,「シュテグリッツ校生徒徒歩グループのための委員会」を発足させました。
 都市化で緑の少なくなったシュテグリッツから離れ、グループで近くの森を散策するというホフマンのアイディアは、父母会の賛同を得ました。生徒達に人気のこの課外教室は、ホフマンが外交官としてオスマン・トルコ帝国の首都、イスタンブールに栄転したため、転機を迎えます。ホフマンはこの散策活動をかつての教え子の一人で、すでにベルリン大学法学部の学生になっていたカール・フィッシャーに託しました。
 当時の記録によると、フィッシャーはカリスマ性に富んでおり、この課外教室を軍隊調の結社のようなグループに仕立て上げていきました。そしてシュテグリッツの古い墓地で見つけた「ワンダーフォーゲルは飛び立つ」という墓碑の短い詩から名前をとり、市役所の地下食堂で郷土史家、医師など5人を後見人にして「ワンダーフォーゲル生徒実行委員会」を発足させました。20世紀の幕が開けた1901年の11月のことでした。
 発足目的は「健全な精神を養うとともに物質文明(産業革命)で見失われた伝統や価値の再発見を目指す」となっています。
 フィッシャーが作り上げたワンゲル運動は独特のルールを持っていました。仲間同志が出会えば、必ず「ハイル」を挨拶します。組織は「グロスバッハハント」と呼ばれるリーダーを中心に「フックス(キツネ)」と呼ばれる護衛とリーダーの保護下で生活する「フォルクス(人民)」によって構成されています。そしてリーダーの決断で森歩きのコースを決め、キャンプで歌を歌ったりしたのです

(産経新聞1997年8月5日朝刊より)