卒業生からのメッセージ

2年間を振り返って


 楠 公一 3等海佐 第17期卒業(戦略科学コース)

「安全保障に関するより高度な知識を習得したい」そんな漠然とした希望から本課程を志願しました。しかし、過去に安全保障分野の学術研究に本格的に取り組んだ経験はありませんでした。そのため、入学後、しばらくは濃密なコースワークに追われ、論文のテーマもなかなか決まりませんでした。ただ、結果的には、コースワークで得た知識と先生方の懇切丁寧な指導のお蔭で最終的な計画はそれなりに納得のいくものとなり、その後の研究も比較的スムーズに進めることができました。先行研究の調査や問いの探求といったテーマ設定にかなりの労力を費やしたことで、かえってその後の執筆が楽になったように思います。最初に受講する「論文の書き方」という講義で「修論の出来は問題の絞り込みで99パーセント決まる」と教わりましたが、まさしく、最初の「絞り込み」が最も重要であったと実感しています。

なお、そうした学術研究における「作法」は修業後の実務にも役立っています。例えば、論文の作成においては、単なる事実関係の羅列にならないように、一定の学術的な「物差し」で分析的に説明することが求められます。また、導出した仮説は「他の事例との比較」などによって批判的に検証しなければなりません。学問の世界では当たり前のことかもしれませんが、こうしたことは目先のことに集中しがちな実務の世界では、なかなか実践できていなかったように思います。現在、再び、短期的な業務処理に追われる日々に戻っていますが、そうした作法を念頭に置くことで、入学前よりも、より正確な「ものの見方」ができるようになったと自負しています。

また、研究の成果は修士論文に凝縮されますが、その他にも様々な人とのつながりという無形の財産を得ることができます。すなわち安全保障分野の先生方や、実務の世界で活躍している関係者とのつながりを得るということです。安全保障にかかわる各方面の実情を直接、現場の人間から聞きながら学術的に検討する、そうしたことが出来るのも本課程の魅力の一つです。安全保障分野の研究に取り組もうとされている方には、ぜひ本課程を志望して頂き、同じ研究分野を開拓していく仲間が一人でも多く増えることを期待しています。

 



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