研究内容


赤外線カメラを利用した対流熱伝達の非定常測定

【 概要 】

 当研究室では、対流熱伝達の非定常メカニズムを調べるために、高速度赤外線カメラを用いた測定手法を開発してきました。この手法により、熱電対などの点計測では決して知ることのできなかった熱伝達の時空間的な振る舞いを、動画としてビジュアルに観測できるようになりました。
 これまでに、(1) 測定の周波数応答・空間分解能の解析解導出、(2) 熱伝達率の瞬時分布およびその変動を定量測定できる伝熱模型の考案および測定の実証、(3) 乱流境界層や剥離・再付着流れに伴う熱伝達の時間・空間変動の測定を行ってきました。その結果、対流熱伝達は実際には時間・空間的に複雑に変動していること、また、一見ランダムに見える熱伝達の変動挙動にも、壁乱流のストリーク構造などに対応した規則性のある空間構造が存在することが明らかになりました。その後、PIVを併用して、壁面近傍における瞬時の速度分布と熱伝達を同時に測定し、乱流渦構造と熱伝達の関係を明らかにする取り組みを行っています。
 また、液体への熱伝達変動特性を調査するために、流体に水を用いた円管内流れの測定も行っています。この測定を通して、剥離・再付着の熱伝達機構や、旋回流、脈動流の伝熱促進機構について研究を進めています。
(本研究の一部は、科学研究費補助金No.22560214および16K06142の援助を受けて実施しました)

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【 主な文献 】
  1. Spatio-Temporal Measurement of Convective Heat Transfer Using Infrared Thermography, InTech open (2011)
  2. 赤外線で観た乱流伝熱の世界, 可視化情報(特集記事), 29-113 (2009), 116-121
  3. 赤外線サーモグラフィによる温度計測とその対流熱伝達測定への応用, 伝熱, Vol.54, No.228 (2015), pp. 47-54
  4. 赤外線高速イメージングによる管内熱伝達の測定, 冷凍, Vol.97, No.1135 (2022), pp. 375-378
  5. Development of spatiotemporal heat transfer measurements in wall-bounded flows, European Mechanics Society (Euromech) Colloquium 631 (Keynote Lecture), (2024), from the presentation slides
【 関連資料 】
  1. 日本機械学会 熱工学ギャラリー

    円管内乱流熱伝達(赤外線高速イメージングによる可視化)
    円管内乱流がはく離・再付着した時の熱伝達(赤外線高速イメージングによる可視化)
    円管内乱流が脈動した時の熱伝達(赤外線高速イメージングによる可視化)


赤外線カメラを利用した沸騰熱伝達の高時空間分解測定

【 概要 】

 赤外線カメラを利用して、沸騰を伴う高速かつ複雑な熱伝達変動を測定する取り組みも行っています。
(本研究の一部は、科学研究費補助金No.21K03908の援助を受けて実施しました)

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【 主な文献 】
  1. 𠮷田雅輝, 矩形微細流路沸騰熱伝達の高時空間分解測定と動的伝熱特性, 大学改革支援・学位授与機構, 82646 第764号 (2024)
【 関連資料 】
  1. 日本機械学会 熱工学ギャラリー

    高温加熱面で跳ね返る液滴の挙動と熱伝達変動の可視化


電子機器の熱設計に関する研究

【 概要 】

 電子機器の小型化・高性能化が進むにつれ、機器の発熱密度は増加を続けており、いかに冷却するかが大きな課題となっています。当研究室では、薄型の筺体内に置かれた発熱体を空冷する基礎実験や、CFD解析で空冷ファンを簡易にモデル化する研究などを行ってきました。
(本研究の一部は、日本機械学会RC181, 202, 214, 227, 239, 248, 256研究分科会 熱WGの研究の一環として実施しました)

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円柱からの渦放出抑制

【 概要 】

 流体が円柱などの柱状物体を横切って流れると、周期的な渦放出(カルマン渦列の形成)により大きな抗力および変動力が働きます。同時に、耳障りな空力騒音(エオリアントーン)も発生します。これらをパッシブに抑制するために、円柱の軸方向に軸対称の突起(リング)を配列する手法について研究してきました。この場合、物体の形状が軸対称であるため、円柱を横切る全方向の流れに対して渦放出が抑制されます。
 実験の結果、リングの形状・配列ピッチを最適化すると、レイノルズ数が20000程度を超えた時に周期的な変動力がほぼ消滅することがわかりました。このメカニズムを明らかにするため、後流の測定や流れの可視化を行ってきました。

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物体まわりの強制対流熱伝達

【 概要 】

 流れの中に置かれた円柱(二次元柱状物体)や立方体(三次元物体)など、基本的な形状をした物体まわりの熱伝達率分布を実測し、流れ場と熱伝達の対応関係を調査してきました。本実験で得られたデータは機器の熱設計に利用できると共に、CFD解析の検証にも使用されています。

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【 主な文献 】
  1. Local Heat Transfer around a Wall-Mounted Cube in the Turbulent Boundary Layer, Int. J. Heat and Mass Transfer, 44-18 (2001), 3385-3395
  2. Local Heat Transfer around a Wall-Mounted Cube at 45 Degree to the Flow in the Turbulent Boundary Layer, Int. J. Heat and Fluid Flow, 24-6 (2003), 807-815
  3. Heat Transfer in Separated Flow Behind a Circular Cylinder for Reynolds Numbers from 120 to 30000 (2nd Report, Unsteady and Three-Dimensional Characteristics), JSME Int. J., Ser.B, 47-3 (2004), 622-630
  4. Unsteady Heat Transfer from a Circular Cylinder for Reynolds Numbers from 3000 to 15,000, Int. J. Heat and Fluid Flow, 25-5 (2004), 741-748
  5. Variation of Nusselt Number with Flow Regimes Behind a Circular Cylinder for Reynolds Numbers from 70 to 30000, Int. J. Heat and Mass Transfer, 47-23 (2004), 5169-5173