月の引力が、潮の満ち干をおこすことは多くの人がご存じでしょう。広い海水面を持ち上げるほどの力ですから、人工衛星の軌道に影響をおよぼしても不思議はありません。実際、月の引力は衛星の軌道に変化をあたえ、特に、軌道がよこたわる面の向きを変えていくように作用します。 さて人工衛星のなかには、地球に対してぴたっと止まった状態で働いているものがあります。静止衛星といって、通信や気象などに使う大事な衛星です。ところが月の引力のせいで軌道が変わると、衛星は静止できなくなってしまう。そのため衛星はガスジェットを噴いて、軌道を元に戻しながら静止を保とうとつとめます。そしてガスを使い果たしたら、衛星の働きは終わる。静止衛星の寿命はふつう、ハードウェアの寿命よりも月の引力とたたかうガスの分量できまります。 夜空に風情をそえる月ですが、人工衛星にはちょっと困った存在といえましょう。
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